暗号資産の税金について、「分離課税になるらしい」と聞いた方もいるでしょう。
現行の制度では、個人が暗号資産取引で得た所得は、株式や投資信託の譲渡益と異なり、原則として雑所得として総合課税の対象となります。
株式や投資信託の譲渡益は、通常、他の所得と分けて税額を計算する申告分離課税の対象です。
これに対し、暗号資産取引で得た所得は他の所得と合算して税額を計算するため、大きな利益が出た場合に株式投資などと比べて税負担が重くなりやすい点が課題とされてきました。
令和8年度税制改正で、一定の「特定暗号資産」の譲渡等について、株式や投資信託と同様に他の所得と分けて税額を計算する申告分離課税の対象とする方針が決まりました。
ただし、今回の改正は、すべての暗号資産取引を一律に株式投資と同じ税制に変更するものではありません。
対象となる暗号資産や取引方法には一定の条件があります。売却や確定申告の準備にあたっては、対象となる暗号資産や取引、適用時期を確認する必要があります。
この記事では、現行制度と改正後の違い、対象となる取引や注意したい点をわかりやすく解説します。
・令和8年度税制改正で暗号資産の課税はどう変わる?

まずは、暗号資産の税金がどのように変わるのか、現行制度と改正後の違いを表で確認しましょう。
| 項目 | 現行 | 改正後 |
| 課税方法 | 原則として総合課税 | 一定の特定暗号資産は申告分離課税 |
| 税額の計算方法 | 他の所得と合算して税額を計算 | 他の所得と分けて税額を計算 |
| 税率 | 所得に応じて税率が上がる
(累進課税) |
20%
(復興特別所得税を含めると20.315%) |
| 損失の繰越控除 | 原則として不可 | 一定の要件のもと3年間可能 |
・暗号資産の分離課税の開始時期は現時点では決まっていない
暗号資産の申告分離課税が実際にいつから適用されるかは、関連する金融商品取引法・資金決済法の改正法の施行時期によって決まります。
そのため、同改正法が令和8年中に施行されれば、早ければ令和9年1月1日以後の譲渡から適用されます。
ただし、改正法の施行時期によっては開始時期が遅くなる可能性もあります。
開始時期については今後確認していく必要があると言えるでしょう。
・申告分離課税は一定の「特定暗号資産」が対象となる
分離課税の対象になるかどうかは、保有している暗号資産の種類と、どの方法で譲渡するかによって変わります。
令和8年度税制改正で申告分離課税の対象とされたのは、一定の「特定暗号資産」です。
特定暗号資産とは、金融商品取引法上の登録制度に基づき対象となる暗号資産などを指します。
暗号資産であれば一律に申告分離課税の対象となるわけではなく、制度上「特定暗号資産」に該当するかどうかを確認する必要があります。
・申告分離課税の対象となる取引は売却先や取引方法が限られる
申告分離課税の対象となるのは、特定暗号資産の譲渡のうち、
・暗号資産取引業者への売委託により行うもの
・暗号資産取引業者に対して行うもの
となります。
わかりやすくいえば、法令上の『暗号資産取引業』を行う者を通じた取引かどうかが、判断材料になります。
そのため、
・海外取引所のみで扱われている暗号資産
・DeFiを通じて取得したトークン
・国内の登録業者を通さない取引
などは、申告分離課税の対象になるか個別に確認をする必要があります。
自分の保有する暗号資産や利用している業者を確認する際は、金融庁の「暗号資産交換業者登録一覧」も参考になります。
同一覧では、登録業者ごとの取扱暗号資産を確認できます。
この一覧は登録業者や取扱銘柄を確認するための資料です。
一覧に掲載されていることだけで申告分離課税の対象と判断できるわけではありません。
実際の売却先や取引方法もあわせて確認しましょう。
・特定暗号資産の譲渡損失は3年間繰越控除できる
これまで暗号資産取引の損失は、上場株式等の譲渡損失のように翌年以後へ繰り越すことができませんでした。
改正後は、特定暗号資産の一定の譲渡で生じた損失について、一定の要件のもとで3年間の繰越控除が認められます。
ただし、繰り越した損失を差し引けるのは、翌年以後の特定暗号資産に係る譲渡所得等です。
給与所得や事業所得、ステーキング報酬など、ほかの所得から自由に差し引けるわけではないことに注意が必要です。
・総合課税に残る暗号資産も譲渡所得の取扱いが見直される
申告分離課税の対象とならない暗号資産についても、従来の取扱いがそのまま続くわけではありません。
改正前は、暗号資産取引による所得は原則として雑所得に区分されていました。
令和8年度税制改正により、申告分離課税の対象外となる一定の暗号資産について、総合課税の譲渡所得として扱う場合のルールが整備されました。
主な注意点をまとめたのが、以下の表です。
| 項目 | 取り扱い・注意点 |
| 50万円特別控除 | 通常の譲渡所得と異なり適用されない |
| 5年超保有した場合の2分の1計算 | 適用されない |
| 取得費の計算 | 総平均法または移動平均法を用いる |
| 損失の取扱い | 他の総合課税所得との損益通算はできない |
このように、総合課税の譲渡所得として扱われる場合でも、通常の譲渡所得と同じ控除や損益通算が認められるわけではないことに注意が必要です。
・暗号資産の税金は改正内容と対象範囲を確認しよう
令和8年度税制改正により、一定の特定暗号資産の譲渡は申告分離課税の対象となり、損失の繰越控除も認められるようになります。
ただし、すべての暗号資産取引に申告分離課税や繰越控除が適用されるわけではありません。
対象となる暗号資産の種類や取引方法、また適用開始時期を確認したうえで対応することが重要です。
暗号資産の売却益や損失の取扱い、相続時の評価・申告で迷う場合は、暗号資産や相続税に詳しい専門家に相談しましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については、税理士などの専門家にご相談ください。


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