法人保険の経理処理は保険の種類や契約内容によって異なります。
そのため、「どの勘定科目で仕訳すればよいのか」と迷う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、法人保険の保険料を支払ったときや、解約返戻金・死亡保険金を受け取ったときの代表的な経理処理を、仕訳とともにわかりやすく解説します。
・法人保険の経理処理は保険の種類と契約内容で決まる

法人保険の経理処理は、保険の種類や契約内容によって異なります。
同じ種類の保険でも、契約内容によって、保険料を費用として処理するのか、資産として計上するのかが変わるためです。
そのため、保険の名称だけで仕訳を判断せず、契約内容を確認したうえで適切に処理する必要があります。
・経理処理を確認する前に保険証券で見るポイント

法人保険の経理処理を確認するときは、保険証券や契約内容のお知らせ、設計書などを用意しましょう。
これらの資料には、仕訳や損金算入の可否を判断するために必要な契約内容が記載されています。
ここでは、仕訳を判断する前に確認しておきたい4つのポイントを解説します。
・保険の種類を確認する
まず、契約している保険の種類を確認します。
法人保険には、定期保険、養老保険、終身保険、医療保険やがん保険などの第三分野保険があり、種類によって保険料の取扱いが異なります。
また、主契約に特約が付いている場合や、養老保険に定期保険などが組み合わされている場合は、それぞれの保険料を分けて処理することがあります。
商品名だけで判断せず、保険証券などで主契約と特約の内容、保険料の内訳まで確認しましょう。
・被保険者・保険金受取人を確認する
次に、被保険者と保険金受取人を確認します。
死亡保険金や満期保険金の受取人が法人なのか、被保険者本人や遺族なのかによって、保険料の経理処理は異なります。
死亡保険金と満期保険金で受取人が異なることもあるため、それぞれ個別に確認しましょう。
・最高解約返戻率を確認する
定期保険や医療保険、がん保険などの第三分野保険では、最高解約返戻率も確認しましょう。
最高解約返戻率とは、保険期間を通じて解約返戻率が最も高くなる時期の割合です。現在の解約返戻率ではなく、保険期間全体で最も高い割合を指します。
保険期間が3年以上で、最高解約返戻率が50%を超える一定の定期保険や第三分野保険では、原則として、支払った保険料の全額を当期の損金に算入できません。
最高解約返戻率の区分に応じて、保険料の一部を資産計上するためです。
そのため、最高解約返戻率は、支払保険料のうち当期の損金に算入できる金額を判断するための重要な項目です。
ただし、最高解約返戻率が50%を超える場合でも、一定の少額契約は資産計上の対象外となります。
最高解約返戻率は、保険会社から交付された設計書や、解約返戻金・解約返戻率の推移表などで確認しましょう。
保険証券だけでは確認できない場合は、契約先の保険会社に問い合わせてください。
・契約日を確認する
定期保険や第三分野保険については、契約日も確認します。
これらの保険は、2019年7月8日以後に契約したものと、それより前に契約したものとで、適用される税務上の取扱いが異なります。
長期間継続している定期保険や第三分野保険は、契約日を確認し、その契約に対応する税務上の取扱いを調べましょう。
・法人保険料を支払ったときの経理処理

法人保険料を支払ったときの経理処理は、保険の種類や契約内容によって異なります。
ここからは、代表的な経理処理を保険の種類別に見ていきましょう。
・定期保険・第三分野保険の保険料を支払った場合
2019年7月8日以後に契約した定期保険・第三分野保険では、最高解約返戻率などの契約内容によって、保険料のうち資産計上する割合が異なります。
最高解約返戻率ごとの基本的な取扱いは、次のとおりです。
| 最高解約返戻率 | 当期に損金算入する割合 | 資産計上する割合 |
| 50%以下 | 原則100% | 原則なし |
| 50%超70%以下 | 60% | 40% |
| 70%超85%以下 | 40% | 60% |
| 85%超 | 契約内容に応じて計算 | |
※契約内容によっては、上記の資産計上の対象外となる場合があります。
最高解約返戻率が85%を超える場合は、一律の割合ではありません。
原則として、契約開始から10年を経過するまでは、支払保険料に最高解約返戻率の90%を乗じた金額を資産計上し、10年経過後は70%を乗じて計算します。
また、資産計上する期間や、資産計上した金額を取り崩す期間も、最高解約返戻率の区分によって異なります。
①原則として費用処理する場合
保険料に相当多額の前払部分が含まれない定期保険や第三分野保険では、原則として、支払保険料を期間の経過に応じて損金算入します。
主に、次のような契約が該当します。
・最高解約返戻率が50%以下の契約
・保険期間が3年未満の契約
・最高解約返戻率が70%以下で、被保険者1人あたりの年換算保険料相当額の合計が30万円以下の契約
支払保険料を全額費用処理する場合の仕訳例は、次のとおりです。
| 借方 | 貸方 |
| 支払保険料 XXX円 | 普通預金 XXX円 |
「支払保険料」などの勘定科目で費用処理した金額を、法人税の計算上も損金に算入します。
②最高解約返戻率などにより一部を資産計上する場合
保険期間が3年以上で、最高解約返戻率が50%を超える定期保険や第三分野保険では、原則として、支払保険料の一部を資産計上します。
資産計上した部分はその事業年度の損金には算入せず、残額を損金算入します。
資産計上した金額は、所定の取崩期間に取り崩し、期間の経過に応じて損金に算入します。
支払保険料の一部を資産計上する場合の仕訳例は、次のとおりです。
| 借方 | 貸方 |
| 支払保険料 XXX円 | 普通預金 XXX円 |
| 前払保険料 XXX円 |
借方の「支払保険料」が当期の費用となる部分、「前払保険料」が資産計上する部分です。
勘定科目には「保険料積立金」などを使用する場合もあります。
なお、最高解約返戻率が50%を超えていても、最高解約返戻率が70%以下で、被保険者1人あたりの年換算保険料相当額の合計が30万円以下である契約は、原則として資産計上の対象外です。
③特定の役員や従業員だけを対象とする場合
保険金や給付金の受取人が被保険者またはその遺族で、特定の役員や従業員だけを被保険者としている場合は、支払保険料の全額をその役員や従業員に対する給与として処理します。
仕訳例は、次のとおりです。
| 被保険者 | 借方 | 貸方 |
| 従業員 | 給与手当 XXX円 | 普通預金 XXX円 |
| 役員 | 役員報酬 XXX円 | 普通預金 XXX円 |
被保険者が役員の場合は、役員給与の損金算入要件にも注意が必要です。
・終身保険の保険料を支払った場合
終身保険の保険料は、死亡保険金の受取人によって経理処理が異なります。
法人が契約者となり、役員や従業員を被保険者とし、法人を死亡保険金受取人とする場合は、支払保険料を「保険料積立金」などの勘定科目で資産計上するのが一般的です。
| 借方 | 貸方 |
| 保険料積立金 XXX円 | 普通預金 XXX円 |
資産計上した保険料は、支払った事業年度の損金には算入しません。
将来、解約返戻金や死亡保険金を受け取ったときに、資産計上していた金額を取り崩します。
一方、死亡保険金の受取人が役員や従業員の遺族となっている場合は、支払保険料をその役員や従業員に対する給与・報酬として処理するのが一般的です。
| 借方 | 貸方 |
| 給与 XXX円 | 普通預金 XXX円 |
給与・報酬として処理した金額は、被保険者の給与所得として所得税等の課税対象になります。
被保険者が役員の場合は、役員給与の損金算入要件にも注意が必要です。
・養老保険の保険料を支払った場合
養老保険の保険料は、死亡保険金と生存保険金(満期保険金)の受取人の組み合わせによって経理処理が異なります。
基本的な取扱いは、次のとおりです。
| 区分 | 死亡保険金・生存保険金の受取人 | 保険料の取扱い |
| ① | いずれも法人 | 全額を資産計上 |
| ② | いずれも被保険者またはその遺族 | 全額を給与として処理 |
| ③ | 死亡保険金は遺族、生存保険金は法人 | 2分の1を資産計上、残りを損金算入 |
①保険料の全額を資産計上するケース
死亡保険金と生存保険金の受取人がいずれも法人である場合は、支払保険料の全額を資産計上します。
| 借方 | 貸方 |
| 保険料積立金 XXX円 | 普通預金 XXX円 |
資産計上した保険料は、保険事故の発生や契約の解除・失効によって契約が終了するまで、損金には算入しません。
②保険料の一部を資産計上するケース
死亡保険金の受取人が被保険者の遺族、生存保険金の受取人が法人である場合は、支払保険料の2分の1を資産計上し、残りの2分の1を期間の経過に応じて損金算入します。
| 借方 | 貸方 |
| 保険料積立金 XXX円 | 普通預金 XXX円 |
| 支払保険料 XXX円 |
ただし、役員や部課長など特定の者だけを被保険者としている場合は、残りの2分の1を通常の保険料として損金算入せず、その役員や従業員への給与として処理します。
③保険料の全額を給与として処理するケース
死亡保険金と生存保険金の受取人がいずれも被保険者またはその遺族である場合は、支払保険料の全額を、その役員や従業員への給与として処理します。
| 借方 | 貸方 |
| 給与 XXX円 | 普通預金 XXX円 |
被保険者が役員である場合は、役員給与の損金算入要件にも注意しましょう。
なお、特約部分の保険料は、特約の内容に応じて養老保険、定期保険または第三分野保険の取扱いを適用します。
保険会社から交付された経理処理資料で、主契約と特約の内訳も確認しましょう。
・解約返戻金を受け取ったときの経理処理

法人保険を解約したときは、受け取った解約返戻金と、帳簿上の資産計上額との差額を処理します。
「前払保険料」や「保険料積立金」などとして資産計上していた金額がある場合は、解約時に全額を取り崩します。
解約返戻金が資産計上額を上回る場合は、差額を「雑収入」として処理します。
| 借方 | 貸方 |
| 普通預金 (解約返戻金の金額)円 | 前払保険料 (資産計上額)円 |
| 雑収入 (差額)円 |
解約返戻金が資産計上額を下回る場合は、差額を「雑損失」として処理します。
| 借方 | 貸方 |
| 普通預金 (解約返戻金の金額)円 | 前払保険料 (資産計上額)円 |
| 雑損失 (差額)円 |
資産計上額がない場合は、解約返戻金の全額を「雑収入」として計上します。
| 借方 | 貸方 |
| 普通預金 (解約返戻金の金額)円 | 雑収入 (解約返戻金の金額)円 |
・死亡保険金を受け取ったときの経理処理

死亡保険金の経理処理は、保険金を会社が受け取るか、遺族が直接受け取るかによって異なります。
・会社が保険金を受け取る場合
会社が死亡保険金を受け取った場合は、資産計上していた金額を取り崩し、受取額との差額を雑収入または雑損失などとして処理します。
基本的な考え方は、解約返戻金を受け取った場合と同じです。
・遺族が直接保険金を受け取る場合
遺族が保険会社から死亡保険金を直接受け取る場合、保険金の受取仕訳はありません。
ただし、「保険料積立金」などの資産計上額が残っている場合は、保険契約の終了に伴い、その全額を雑損失として取り崩します。
・法人保険の経理処理で注意するポイント

法人保険の経理処理を誤らないために、注意すべき点を確認しましょう。
・法人保険料をすべて損金にできるとは限らない
法人保険の保険料は、すべて支払時に損金算入できるとは限りません。
保険の種類や契約内容によっては、保険料の一部または全部を資産計上する必要があります。
保険証券や保険会社の経理処理資料を確認し、契約内容に合った処理を行いましょう。
・解約返戻金の受取と退職金の支給は別々に処理する
解約返戻金を役員退職金の原資にする場合でも、解約返戻金の受取と退職金の支給は、それぞれ別の取引として経理処理します。
解約返戻金は資産計上額との差額を処理し、支給した退職金は役員退職金として計上しましょう。
役員退職金は、金額の妥当性や株主総会の決議などによる確定時期にも注意が必要です。
・名義変更や払済保険への変更は個別に確認する
保険契約の名義変更や払済保険への変更では、通常の保険料の支払いや解約とは異なる経理処理が必要になることがあります。
契約内容によって取扱いが異なるため、変更前に保険会社や税理士への確認を行いましょう。
・まとめ:法人保険の経理処理に迷ったら税理士に確認しよう
法人保険の経理処理は、保険の種類や契約内容、保険金の受取人などによって異なります。
誤った処理を防ぐため、保険証券や保険会社の資料を確認し、判断に迷う場合は事前に税理士などへ相談することをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については、税理士などの専門家にご相談ください。


コメント