土地を売却するとき、「税金を少しでも抑えたい」と考える方は多いでしょう。
土地の売却益には原則として所得税・復興特別所得税・住民税がかかりますが、土地の種類や売却理由によっては、特例を使って税負担を抑えられることがあります。
令和8年度税制改正では、土地や自宅の売却に関係する一部の特例について、適用期限の延長や要件の見直しが行われました。
売却する土地の状況によって使える制度は異なるため、どの特例が自分のケースに当てはまるかを確認することが大切です。
この記事では、土地売却で使える主な特例をケース別に解説します。
・土地売却で使える特例一覧を状況別に確認

土地売却で使える特例は、売却する土地の状況によって異なります。
まずは次の表で、自分の土地売却に関係しそうな特例を確認してみましょう。
| 売却する土地・状況 | 当てはまる主なケース | 確認したい特例 |
| 相続した土地・建物を売る | 相続後に空き家となった住宅とその敷地を売却した | ①相続空き家の3,000万円特別控除 |
| 相続税を払った土地・建物などを、一定期間内に売却した | ②相続財産の取得費加算の特例 | |
| 自宅として住んでいた家・マンションを売る | 自分が住んでいた家・マンションを売却した | ③居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例 |
| 売った年の1月1日時点で、所有期間が10年を超える自宅を売却した | ④マイホームを売ったときの軽減税率の特例 | |
| 自宅を売って利益が出て、新しい自宅に買い換えた | ⑤特定の居住用財産の買換えの特例 | |
| 自宅を売って損失が出て、新しい自宅を購入した | ⑥マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 | |
| 住宅ローンが残る自宅を売り、売却損が出た | ⑦特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 | |
| 使っていない土地・空き地を売る | 使われていない土地や利用度の低い土地を、一定金額以下で売却した | ⑧低未利用土地等の100万円特別控除 |
| 公共事業のために土地を売る | 公共事業のために土地や建物を売却した | ⑨収用等の5,000万円特別控除 |
| 土地区画整理・住宅地造成・農地売却などに該当する | 土地区画整理、住宅地造成、農地保有合理化などにより売却した | ⑩土地区画整理、住宅地造成、農地保有合理化等の特別控除 |
| 事業用の土地・建物を買い換える | 事業用の土地・建物を売り、別の事業用資産に買い換えた | ⑪特定の事業用資産の買換えの特例 |
| 平成21年・22年に取得した土地を売る | 平成21年・22年に取得した国内の土地などを売却した | ⑫平成21年・22年取得土地等の1,000万円特別控除 |
それぞれの特例は、対象となる不動産や適用要件が異なります。
ここからは、表で紹介した特例について、相続した土地・建物、自宅、空き地などの状況別に詳しく解説します。
・相続した土地・建物を売る場合の特例

相続した土地や建物を売却すると、売却益に対して譲渡所得税がかかります。
ただし、一定の要件を満たす場合は、譲渡所得から控除を受けられる特例や、取得費に相続税額の一部を加算できる特例を使えることがあります。
「相続空き家の3,000万円特別控除」と「相続財産の取得費加算の特例」がその特例です。
どちらも相続した不動産の売却時に税負担を抑えるための制度ですが、対象となる不動産や適用要件、計算方法が異なります。
①相続空き家の3,000万円特別控除
相続空き家の3,000万円特別控除は、正式には「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。
亡くなった人が住んでいた家やその敷地を相続し、相続から3年後の年末までに売却する場合に確認したい特例です。
要件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。
この特例は、相続後に使われないまま残る古い空き家の発生を抑えるための制度です。
そのため、単に「相続した家を売れば使える」というものではありません。
亡くなった人が住んでいた家であること、相続後に事業用・貸付用・居住用として使っていないことなどが要件になります。
主な要件は、次のとおりです。
・相続または遺贈により取得した家屋や敷地であること
・家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたものであること
・区分所有建物登記がされている建物ではないこと
・相続開始の直前に、亡くなった人以外が住んでいなかったこと
・相続時から売却時まで、事業用・貸付用・居住用として使っていないこと
・相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
・売却代金が1億円以下であること
・親子や夫婦など、特別な関係にある人へ売却していないこと
建物を売却する場合は、原則として一定の耐震基準を満たす必要があります。
耐震基準を満たしていない場合でも、建物を取り壊して敷地を売却する場合や、売却後に買主が一定期限までに耐震改修・取壊しを行う場合などは対象になります。
亡くなった人が老人ホーム等に入所していた場合でも、一定の要件を満たせば特例を使えることがあります。
また、相続人が複数いる場合は、各相続人が要件を満たせばそれぞれ控除を受けられます。
ただし、相続人の数が3人以上の場合、控除額は1人あたり最高2,000万円です。
②相続財産の取得費加算の特例
相続財産の取得費加算の特例は、相続税を支払った人が、相続や遺贈によって取得した財産を一定期間内に売却した場合に使える特例です。
通常、土地や建物を売却したときの譲渡所得は、売却代金から取得費や譲渡費用を差し引いて計算します。
この特例を使うと、支払った相続税額のうち一定額を取得費に加算することが可能です。
取得費が増える分、譲渡所得が少なくなり、結果として譲渡所得税の負担を抑えることができます。
主な要件は、次のとおりです。
・相続または遺贈により財産を取得した人であること
・その財産を取得した人に相続税が課税されていること
・相続開始日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日(相続発生日から3年10ヶ月以内)までに売却していること
なお、同じ土地や建物について、相続空き家の3,000万円特別控除と相続財産の取得費加算の特例を重ねて使うことはできません。
両方の要件に当てはまる場合は、どちらを使ったほうが税負担を抑えられるかを確認しましょう。
・自宅を売る場合の特例

マイホームの売却には、譲渡所得から一定額を控除できる特例や、税率を軽くできる特例、売却損を他の所得から差し引ける特例などがあります。
どの特例を使えるかは、売却益の有無、所有期間、買換えの有無、住宅ローンの残高などによって異なります。
③居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例は、自分が住んでいた家やマンションを売却したときに、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です。
所有期間の長さにかかわらず使えるため、自宅を売って利益が出た場合に、まず確認したい制度と言えます。
主な確認ポイントは、次のとおりです。
・自分が住んでいる家や、その敷地の売却であること
・以前住んでいた家の場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
・売却した年、その前年、前々年に一定のマイホーム特例を受けていないこと
・親子や夫婦など、特別な関係にある人へ売却していないこと
自宅の売却益が大きくない場合、この特例だけで税負担を大きく抑えられることがあります。
ただし、買換え特例など併用できない制度もあるため、他の特例との関係も確認しておきましょう。
④マイホームを売ったときの軽減税率の特例
マイホームを売ったときの軽減税率の特例は、長く所有していた自宅を売却した場合に、通常より低い税率で譲渡所得税を計算できる制度です。
対象となるのは、売った年の1月1日時点で所有期間が10年を超えているマイホームです。
主な確認ポイントは、次のとおりです。
・日本国内にある自宅や、その敷地の売却であること
・売った年の1月1日時点で、所有期間が10年を超えていること
・売却した年の前年・前々年にこの特例を受けていないこと
・親子や夫婦など、特別な関係にある人へ売却していないこと
この特例は、③マイホームを売った時の3,000万円特別控除との併用が可能です。
売却益が大きい場合は、確認しておきましょう。
⑤特定の居住用財産の買換えの特例
特定の居住用財産の買換えの特例は、自宅を売って利益が出たあと、新しい自宅に買い換える場合に使える制度です。
この特例を使うと、売却した年に譲渡益への課税を受けるのではなく、買い換えた自宅を将来売却するときまで課税を繰り延べられます。
税金が免除される制度ではないため、将来の売却時に課税される点には注意が必要です。
主な確認ポイントは、次のとおりです。
・売った人の居住期間が10年以上であること
・売った年の1月1日時点で、売却する家屋や敷地の所有期間が10年を超えていること
・売却代金が1億円以下であること
・一定期間内に新しい自宅を取得し、居住すること
・親子や夫婦など、特別な関係にある人へ売却していないこと
令和8年度税制改正では、適用期限が令和9年12月31日まで2年延長予定となっています。
また、買換資産が建築後使用されたことのない家屋で、令和10年1月1日以後に居住する場合などは、災害危険区域等にある家屋が対象外となる要件も加わっています。
⑥マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
マイホームを売って損失が出たあと、新しいマイホームに買い換えた場合に使える特例です。
一定の要件を満たすと、売却損をその年の給与所得や事業所得などから差し引くことができます。
控除しきれない損失は、翌年以後3年間繰り越しが可能です。
主な確認ポイントは、売却した自宅の所有期間、新しい自宅の取得・居住時期、住宅ローンの有無などです。
令和8年度税制改正では、適用期限の延長及び対象となる家屋の要件が追加されています。
⑦特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
住宅ローンが残っているマイホームを売却し、売却損が出た場合に使える特例です。
一定の要件を満たすと、売却損をその年の給与所得や事業所得などから差し引くことができます。
控除しきれない損失は、翌年以後3年間繰り越して控除できます。
⑥との違いは、新しいマイホームへの買換えが前提ではない点です。
売買契約日の前日に住宅ローンが残っていることや、売却代金が住宅ローン残高を下回ることなどを確認する必要があります。
・空き地など活用されていない土地を売る場合の特例

空き地など活用されていない土地を売却する場合は、「低未利用土地等の100万円特別控除」を使えることがあります。
⑧低未利用土地等の100万円特別控除
低未利用土地等を譲渡した場合の100万円特別控除は、一定の要件を満たす土地等を売却した場合に、長期譲渡所得から最高100万円を控除できる制度です。
低未利用土地等とは、居住用・事業用などに使われていない土地や、周辺の土地と比べて利用の程度が低い土地を指します。
主な確認ポイントは、次のとおりです。
・都市計画区域内にある低未利用土地等であること
・売った年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えていること
・売却代金が建物等を含めて500万円以下(一定の区域内にある土地等800万円以下)であること
・親子や夫婦など、特別な関係にある人へ売却していないこと
・買主が売却後に土地等を利用する意向を示していること
・公共事業・農地・事業用土地などで使える特例

公共事業や土地区画整理、農地の売却、事業用資産の買換えなど、特定の目的で土地を売却する場合にも、税負担を抑えられる特例があります。
⑨収用等の5,000万円特別控除
収用等の5,000万円特別控除は、公共事業などのために土地や建物を売却した場合に使える特例です。
要件を満たすと、譲渡所得から最高5,000万円を控除できます。
道路整備や公共施設の建設などに伴って土地を売却する場合は、対象になるか確認しましょう。
⑩ 土地区画整理・住宅地造成・農地売却などの特例
土地区画整理事業や住宅地造成事業、農地保有の合理化などのために土地を売却する場合も、特別控除の対象になることがあります。
控除額は事業の内容によって異なり、2,000万円・1,500万円・800万円などの特別控除が設けられています。
通常の土地売却とは要件が異なるため、対象となる事業や売却先を確認することが大切です。
また、優良住宅地の造成等のために所有期間5年超の土地等を譲渡した場合などには、長期譲渡所得に軽減税率が適用される特例もあります。
⑪ 特定の事業用資産の買換えの特例
特定の事業用資産の買換えの特例は、事業用の土地や建物などを売却し、新たな事業用資産に買い換える場合に使える制度です。
この特例を使うと、売却益への課税を将来に繰り延べることができます。
ただし、税金が免除される制度ではありません。
売却する資産と買い換える資産がどちらも事業用であることなど、一定の要件を確認しておきましょう。
・特定の時期に取得した土地を売る場合の特例

取得した時期によっては、土地の売却時に使える特例があります。
⑫平成21年・22年取得土地等の1,000万円特別控除
平成21年または平成22年に取得した国内の土地等を売却する場合、一定の要件を満たすと、譲渡所得から最高1,000万円を控除することが可能です。
・土地売却の特例は売却前に適用要件を確認しよう
土地売却の際に使える特例は、対象の土地や売却時の状況によって異なります。
特例を利用できれば、譲渡所得から一定額を控除できるなど、税負担を抑えられる場合があります。
ただし、要件や必要書類は制度ごとに異なり、複数の特例を自由に併用できるわけでもありません。
特例を利用する場合でも、自動的に税額が軽減されるわけではありません。
原則として確定申告が必要です。
使える特例や必要書類を確認するためにも、売却前に専門家への相談をおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については、税理士などの専門家にご相談ください。


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