令和8年度税制改正では、法人向けの税制として、賃上げ促進税制の見直しと、設備投資を後押しする新たな税制措置の創設が盛り込まれました。
この記事では、法人に関係する2つの改正内容について、今後の人件費や設備投資を検討する際に押さえておきたいポイントをまとめます。
・法人向け改正で確認したい賃上げ促進税制と設備投資促進税制

令和8年度税制改正において法人課税の柱として示されたのが、賃上げ促進税制の見直しと設備投資を促す税制措置の創設です。
・賃上げ促進税制は賃上げした企業の税負担を軽くする制度
賃上げ促進税制は、一定の賃上げを行った企業が税額控除を受けられる制度です。
人件費の増加を税制面から後押しする制度ですが、今回の改正では大企業向け措置の廃止など、制度全体としては縮小方向の見直しが行われています。
・設備投資促進税制は設備を導入する企業の税負担を軽くする制度
設備投資促進税制は、機械装置や建物、ソフトウェアなどへの投資を行う企業の税負担を軽くする制度です。
令和8年度税制改正では、一定規模以上の国内投資を対象に、即時償却または税額控除を選択できる新制度が創設されます。
賃上げと設備投資は、どちらも会社の資金計画や経営判断に関わります。
今後の人件費や投資計画を考えるうえで、改正後の制度内容を確認しておくことが重要です。
・賃上げ促進税制は縮小される

賃上げ促進税制は、企業による賃上げを税制面から後押しする制度です。
企業規模に応じて大企業向け措置、中堅企業向け措置、中小企業向け措置に分かれています。
これまで、物価上昇に対応した賃上げを促すため、企業規模に応じた税額控除の仕組みが設けられてきました。
しかし、近年は大企業を中心に賃上げが進む一方、中小企業では人材確保のための賃上げ負担が重くなっています。
令和8年度税制改正では、こうした状況を踏まえ、大企業向け措置の廃止や中堅企業向け措置の見直しなど、縮小方向の改正が行われました。
・大企業向け措置は廃止される
大企業向けの賃上げ促進税制は、当初の適用期限である令和9年3月31日を待たず、令和8年3月31日をもって廃止されます。
これまで大企業は、継続して雇用している従業員への給与を前年より一定以上増やした場合、その増加額の一部を法人税から差し引くことができました。
しかし、令和8年度税制改正により、大企業も対象となる全法人向けの措置は廃止されます。
そのため、令和8年4月1日以後に開始する事業年度からは、大企業が従来の賃上げ促進税制を前提に税額控除を受けることはできなくなります。
・中堅企業向け措置は要件見直し後に廃止される
常時使用する従業員数が2,000人以下の青色申告法人を対象とする中堅企業向け措置は、令和9年3月31日の適用期限到来をもって廃止されます。
ただし、令和8年4月1日から令和9年3月31日までに開始する事業年度については、要件を見直したうえで適用されます。
| 継続雇用者給与等支給額の増加割合 | 税額控除率 |
| 前年度比4%以上 | 10% |
| 前年度比5%以上 | 15% |
| 前年度比6%以上 | 25% |
原則10%の税額控除を受けるための賃上げ率は、現行の3%以上から4%以上に引き上げられることに注意が必要です。
・中小企業向け措置の税額控除は維持される
中小企業者である青色申告法人を対象とする中小企業向け措置においては、これまでどおり一定以上の賃上げをした場合に税額控除を受けることができます。
具体的な税額控除率は次のとおりです。
| 賃上げ要件 | 税額控除率 | 改正後の扱い |
| 全雇用者給与等支給額が前年度比1.5%以上増加 | 15% | 維持 |
| 全雇用者給与等支給額が前年度比2.5%以上増加 | 30% | 維持 |
・教育訓練費の上乗せは中堅企業・中小企業ともに廃止される
基本の税額控除に加えて受けられる上乗せ措置については、残るものと廃止されるものがあります。
改正後の扱いは次のとおりです。
| 上乗せ措置 | 内容 | 改正後の扱い |
| 子育て支援・女性活躍支援に関する上乗せ | 一定の認定を受けている場合、税額控除率に5%を上乗せ | 維持 |
| 教育訓練費に関する上乗せ | 教育訓練費が一定以上増加した場合の上乗せ | 廃止 |
中小企業向けの賃上げ促進税制では、教育訓練費の増加に係る上乗せ措置が廃止されます。
一方で、子育てとの両立支援や女性活躍支援に関する上乗せ措置は維持されます。
・設備投資促進税制は企業の大規模投資を後押しする制度

令和8年度税制改正では、設備投資を後押しする新たな税制措置として、「特定生産性向上設備等投資促進税制」が創設されます。
名称は長いですが、内容としては、一定規模以上の国内設備投資を行う法人が税制上の優遇を受けられる、いわゆる設備投資減税です。
政府は、国内投資の拡大を通じて企業の「稼ぐ力」を高め、賃上げを含めた好循環につなげることを目的として、この税制を設けています。
概要をまとめたのが以下の表です。
| 項目 | 内容 |
| 対象法人 | 青色申告書を提出する法人 |
| 対象投資 | 一定規模以上で、投資利益率が年平均15%以上と見込まれる設備投資 |
| 主な対象資産 | 機械装置、建物、ソフトウェアなど |
| 投資下限額 | 大企業は35億円以上
中小企業者等は5億円以上 |
| 選択できる措置 | 即時償却または税額控除 |
| 税額控除率 | 原則7%
建物等は4% |
| 控除上限 | 当期の法人税額の20% |
・対象は投資利益率15%以上の大規模投資
この制度は、すべての設備投資が対象になるわけではありません。対象になるのは、投資利益率(ROI)が年平均15%以上と見込まれる大規模投資です。
投資下限額は原則35億円以上で、中小企業者等は5億円以上とされています。通常の設備更新ではなく、生産性や収益力の向上につながる大規模な投資を後押しする制度といえます。
・即時償却または税額控除を選択できる
対象設備については、即時償却または税額控除を選択できます。
即時償却を選ぶと、対象設備の取得価額を初年度にまとめて償却できます。
税額控除を選ぶ場合は、取得価額の7%を法人税額から差し引くことが可能です。
ただし、建物、建物附属設備、構築物については4%です。
なお、税額控除には上限があり、控除できる金額は当期の法人税額の20%までとされています。
・大企業は賃上げや国内設備投資の要件にも注意が必要
大企業については、対象投資の要件を満たしていても、賃上げや国内設備投資に関する一定の要件を満たさない場合、本制度を適用できないことがあります。
具体的には、前年度より所得が増加しているにもかかわらず、継続雇用者給与等支給額の増加割合や国内設備投資額に関する要件を満たさない場合が該当します。
また、この制度を利用するには、経済産業大臣の確認を受けた設備を、国内で自社の事業のために使用することが必要です。
適用要件や手続きが細かいため、実際に利用を検討する際は、税理士などの専門家に確認しながら進めましょう。
・令和8年度税制改正では法人向け制度の変更点を確認しよう
令和8年度税制改正では、賃上げ促進税制の縮小と、設備投資促進税制の創設が盛り込まれました。
賃上げ促進税制では、大企業向け措置の廃止や中堅企業向け措置の見直し、教育訓練費に関する上乗せ措置の廃止などが行われます。
これまで賃上げ促進税制を利用していた企業は、改正後も自社が対象になるのか、どの控除や上乗せ措置を利用できるのかを確認しておく必要があります。
設備投資促進税制は、企業の大規模な設備投資を後押しする新しい制度です。
ただし、投資利益率や投資額、大企業に関する追加要件など、適用には細かい条件があります。
令和8年度以降の人件費や設備投資の計画を立てる際は、改正内容を確認したうえで、自社に関係する制度を把握しておきましょう。
判断に迷う場合や、実際に制度の利用を検討する場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については、税理士などの専門家にご相談ください。


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