「ファミリーオフィスという言葉を耳にするけれど、資産管理会社とは何が違うのか」「自分くらいの資産規模でも関係があるのか」と疑問に感じている方もいるでしょう。
ファミリーオフィスとは、単なる資産運用にとどまらず、一族の資産・事業・承継を長期的にまとめて管理するための体制です。
本記事では、資産管理会社やプライベートバンクとの違い、主な役割、必要性を判断するポイントから、自分に合った始め方までを解説します。
ファミリーオフィスとは?資産家一族の「総合管理チーム」

ファミリーオフィスとは、資産家一族のために、資産管理・運用、相続、事業承継、税務、法務などをまとめて管理する仕組みのことです。
税理士や弁護士、金融機関、不動産の専門家などがそれぞれ個別に動くのではなく、一族全体の方針に沿って連携し、資産や事業を次世代へどう引き継ぐかを継続的に管理する「司令塔」のような役割を担います。
ファミリーオフィスは、必ずしも専用の会社を1社作ることを意味しません。
一族専用の組織を設ける場合もあれば、既存の資産管理会社や外部の専門家を組み合わせて、その機能を持たせる場合もあります。
具体的な体制や業務範囲は、一族の資産や課題によって異なります。
ファミリーオフィスと資産管理会社・プライベートバンクの違い

3つの違いは、「財産を保有する法人」「金融機関が提供するサービス」「一族全体を支える体制」という位置づけで整理できます。
ただし、実際の業務には重なる部分もあります。
| 比較対象 | 基本的な位置づけ | 主な役割 |
| ファミリーオフィス | 一族の資産・事業・承継を管理する体制 | 複数の専門家や金融機関と連携し、一族全体の方針や意思決定を支える |
| 資産管理会社 | 財産を法人で保有・管理するための「器」 | 不動産や株式などの保有・管理、賃料や配当の受け取りなど |
| プライベートバンク | 富裕層向けに資産管理・運用などを提供する金融機関 | 資産運用をはじめ、資産承継・事業承継などを支援する |
資産管理会社との違い|財産を保有する「器」と全体を管理する「仕組み」
資産管理会社は、主に不動産や株式などの財産を保有・管理するための会社です。
一方、ファミリーオフィスは、会社の中にある財産だけでなく、オーナー個人の自社株や預金なども含めて、一族全体の資産や承継をまとめて考える仕組みです。
資産管理会社そのものが、ファミリーオフィスの中心として機能することもあります。
つまり、資産管理会社が財産を持つ「器」であるのに対し、ファミリーオフィスはその器も含めて一族全体を管理する仕組みです。
プライベートバンクとの違い|金融機関側のサービスか、一族側の仕組みか
プライベートバンクが金融機関側から提供されるサービスなのに対し、ファミリーオフィスは一族側の立場で資産全体を管理・調整する仕組みです。
プライベートバンクは、富裕層向けに資産管理や運用などの金融サービスを提供する金融機関です。
金融機関によっては、信託、不動産、資産承継・事業承継などまで幅広く支援します。
一方、ファミリーオフィスは、一族の方針を軸に、複数の金融機関や税理士、弁護士などの専門家を横断して調整します。
プライベートバンクを利用しながら、財産全体とのバランスを確認することもあります。
ファミリーオフィスは何をする?主な4つの役割

ファミリーオフィスは、家族の希望を具体的な管理方針や承継計画に落とし込み、専門家とともに実行・見直しを支えます。
1. 資産を管理・運用する
ファミリーオフィスは、金融資産、不動産、自社株などをまとめて把握し、一族全体の資産を管理・運用します。
例えば、複数の銀行や証券会社に口座があり、不動産や自社株も保有していると、「どこに、どのような資産が、どれくらいあるのか」を家族自身でも把握しにくくなることがあります。
また、金融資産に比べて不動産や自社株の割合が大きすぎないか、すぐ使える現金が十分にあるかといった資産配分も確認する必要があります。
そこで、保有資産や収入、借入れなどを整理し、資産全体のバランスを見ながら管理・運用方針を考えるのが、ファミリーオフィスの役割の一つです。
2. 相続・税務・法務をまとめて考える
税務と法務など、異なる分野の判断をつなぎ、対策に食い違いが生じないよう調整するのもファミリーオフィスの役割です。
税理士や弁護士などがそれぞれの専門業務を担い、ファミリーオフィスは相談内容や計画をまとめる窓口となります。
例えば、不動産の生前贈与を検討する場合、税負担の比較だけでは判断できません。贈与後の家賃収入を誰が受け取るのか、贈与する側の生活資金は足りるのか、ほかの家族への財産配分と整合するのかも検討する必要があります。
ファミリーオフィスを活用し、税金、権利関係、資金繰りへの影響を必要に応じて各専門家に確認することで、目的に合った方法を選びやすくなります。
3. 相続と事業承継を一緒に考える
企業オーナーの承継では、家族への財産配分と、会社の経営を安定させることを両立させる必要があります。
例えば、後継者に自社株を集めたい一方で、ほかの子にも財産を残したいと考えるケースです。
自社株だけで配分を考えると、後継者の経営権と、ほかの相続人への配慮が両立しにくい場合があります。
そこで、不動産や金融資産も含め、誰にどの財産を渡すかを検討します。株式の評価や納税資金に加え、承継後の持株比率、会社と家族双方の資金繰りを確認することも欠かせません。
ファミリーオフィスは、こうした論点を一体で整理し、相続と事業承継をあわせて検討できるよう支援します。
4. 次世代への資産・事業の承継を支える
家族が大切にしてきた価値観を共有し、意思決定の仕組みを整えることも、ファミリーオフィスの役割です。
次世代への承継では、財産の名義だけでなく、管理する知識や判断の基準も引き継ぎます。
例えば、不動産を引き継ぐ子が、収支や修繕の予定を知らなければ、承継後の管理に戸惑うかもしれません。
自社株についても、保有する意味や会社との関わり方を事前に共有しておく必要があります。
ファミリーオフィスでは、家族で定期的に話し合う場を設けるなど、次世代への円滑な承継を支援します。
ファミリーオフィスが必要なのはどんな人?

ファミリーオフィスが必要かどうかは、資産額だけでなく、資産や家族、事業の複雑さによって変わります。
次のような状況では、ファミリーオフィスを活用することも選択肢になります。
自社株・不動産・金融資産など複数の資産を保有している
資産の種類や名義が増え、誰が何を持ち、将来どう承継するかを一人で把握しにくくなっている場合は、ファミリーオフィスを活用することで、資産全体をまとめて管理しやすくなります。
相続と事業承継を同時に考える必要がある
後継者への自社株承継と、ほかの家族への財産配分を同時に考える必要がある企業オーナーにとっては、ファミリーオフィスも選択肢の一つになります。
相談する専門家が増えている
税理士、弁護士、金融機関、不動産会社など相談先が増え、それぞれの提案を自分でつなぎ合わせることが難しくなっている場合は、全体を調整する役割としてファミリーオフィスを取り入れる方法もあります。
ファミリーオフィスはどう始める?代表的な2つの選択肢

ファミリーオフィスにはさまざまな形がありますが、代表的なのが「一族専用の体制を設ける方法」と「外部のマルチ・ファミリーオフィスを利用する方法」です。
一族専用のシングル・ファミリーオフィスを設ける
シングル・ファミリーオフィスは、一つの一族専用の体制です。
家族の事情に合わせて柔軟に運営できる一方、専任人材や外部専門家への費用など、相応のコストがかかります。
マルチ・ファミリーオフィスを利用する
マルチ・ファミリーオフィスは、複数の一族に資産管理や承継支援を提供する外部サービスです。
自前で専属の組織を持たずに利用できますが、対応範囲や料金はサービスによって異なるため、自社株や不動産、相続・事業承継まで対応できるかを確認して選びましょう。
ファミリーオフィスを作らなくても、資産全体をまとめて考えることはできる

専属のファミリーオフィスを設けなくても、資産全体の情報を集め、専門家が連携する体制を整えることは可能です。
例えば、自社株は税理士、不動産は不動産会社、金融資産は金融機関、法務は弁護士に相談しているとします。
この役割分担自体に問題があるわけではありません。
重要なのは、それぞれの判断を家族全体の資産・承継方針に照らして考えることです。
大きな組織を作ることよりも、資産全体を把握し、必要な専門家が連携できる体制を整えることが出発点になります。
まとめ:資産・事業・相続を総合的に考えることが大切
ファミリーオフィスは、一族の資産・事業・相続などを長期的にまとめて管理するための仕組みです。
「自分はファミリーオフィスを設けるほどの資産家ではない」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、自社株や不動産、金融資産など複数の財産を持っているのであれば、それぞれを別々に考えるのではなく、資産全体を見ながら相続や事業承継を考えることが大切です。
特に不動産は、相続税評価や収益性、売却の判断、遺産分割、納税資金など、さまざまな論点に関わります。
自社株や金融資産とあわせて検討するなら、不動産にも詳しく、必要に応じて弁護士などほかの専門家とも連携できる税理士に相談するとよいでしょう。
佐久間会計事務所では、不動産オーナーへの支援を得意とし、相続や事業承継など幅広い相談に対応しています。
また、各士業の事務所と提携しており、税務だけでは完結しない課題についても、必要な専門家につなぐことが可能です。
「誰にどの財産を引き継ぐべきかわからない」「会社と個人の資産をまとめて整理したい」「不動産を含めた相続対策を考えたい」といった場合は、まずはお気軽にご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の判断については、専門家にご相談ください。


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