「よりによって今日…」死亡日に株価が急騰したら相続税も高くなる?

家族が亡くなり、保有していた株式を調べてみると、亡くなったその日に株価が急騰。
なかには、ストップ高になった銘柄もあった――。
相続財産を確認するなかで、そんな事実に気づくことがあるかもしれません。
株価の上昇は、普段なら歓迎できる出来事です。
しかし、相続となると「よりによって、この高い株価で相続税まで計算するの?」と気になるのではないでしょうか。
結論からいうと、死亡日に株価が急騰していても、その日の株価で相続税評価額が決まるわけではありません。
では、いつの株価を確認すればよいのでしょうか。
具体的な数字とともに見ていきましょう。
相続した上場株式は「いつの株価」で評価する?

相続した上場株式の評価を行う際は、亡くなった日の終値と、死亡月・前月・前々月の月平均額を確認します。
この4つのうち最も低い価格を、相続税評価に使います。
比較するのは、次の4つの価格です。
| 比較する時期 | 評価に使う価格 |
| ① 相続開始日の最終価格 | 亡くなった日の終値 |
| ② 相続開始月の月平均額 | 亡くなった月の終値の平均額 |
| ③ 相続開始月の前月の月平均額 | 前月の終値の平均額 |
| ④ 相続開始月の前々月の月平均額 | 前々月の終値の平均額 |
たとえば10月に亡くなった場合は、死亡日の終値と、10月・9月・8月それぞれの月平均額を比較します。
10月の月平均額は、死亡日までではなく、死亡後を含む月全体のものです。
複数の銘柄を相続した場合は、銘柄ごとに比較を行い、それぞれの1株当たりの評価額に株数を掛けて、相続税評価額を計算します。
つまり、亡くなった日の株価が高かったとしても、その価格がそのまま相続税評価額になるとは限りません。
死亡日の時価500万円でも、相続税評価額は300万円?

それでは実際に具体例を見ていきましょう。
ある上場株式を1,000株保有していた方が亡くなり、その日の株価が急騰。
5,000円でストップ高となり、そのまま取引を終えたとします。
4つの価格が次のとおりだった場合、評価額はいくらになるでしょうか。
| 比較する価格 | 1株当たりの金額 |
| 死亡日の終値 | 5,000円 |
| 死亡月の月平均額 | 4,400円 |
| 前月の月平均額 | 3,600円 |
| 前々月の月平均額 | 3,000円 |
※株式分割などに伴う評価上の調整がない場合とします。
死亡日の終値で計算すると、評価額は5,000円×1,000株=500万円です。
しかし、この例では前々月の月平均額3,000円が最も低いため、相続税評価額は3,000円×1,000株=300万円となります。
このように、死亡日にストップ高となり高い価格で取引を終えていても、その価格だけで相続税評価額が決まるわけではありません。
死亡月・前月・前々月の月平均額の方が低ければ、その低い価格が評価に使われます。
「よりによって死亡日に高騰したから、相続税まで高くなる」と慌てる必要はないことがわかります。
相続税評価に使う株価はどうやって調べる?

では、死亡日の終値や各月の平均株価は、どこで確認すればよいのでしょうか。
まず確認したいのが、亡くなった方が利用していた証券会社の資料です。
残高証明書などを取り寄せると、相続開始日時点で保有していた銘柄や株数を確認できます。
相続税の申告に使う場合は、証券会社へ「死亡日の終値と、死亡月・前月・前々月の月平均額を確認したい」と伝えてみましょう。
必要な価格が資料に記載されているか、不足する場合に別の資料を発行してもらえるかを確認できます。
東証上場株式の株価を自分で調べる場合は、日本取引所グループ(JPX)が公表している資料を確認すると良いでしょう。
| 確認したい価格 | 主な確認先 |
| 死亡日の終値 | JPXの「東京証券取引所日報」の株式相場表など |
| 各月の月平均額 | JPXの「月間相場表」の株式相場表にある「終値平均」 |
月間相場表では、対象となる年・月を選び、銘柄名や銘柄コードから確認します。
死亡日はその日の「終値」を確認しますが、ほかの3つは月末の終値ではありません。
死亡月・前月・前々月は、それぞれ1か月分の終値を平均した「月平均額」を使います。
また、死亡月の月平均額は、その月が終わるまで確定しません。
亡くなった直後に4つの価格がすべてそろうとは限らないため、資料が公表されてから改めて確認する必要があります。
4つの価格がそろったら銘柄ごとに比較し、相続税評価に使う価格を確認しましょう。
計算に使用した資料は、申告の根拠として保存しておくと安心です。
亡くなった日が土日・祝日なら、どの株価を使う?

亡くなった日が土日・祝日などで証券取引所が休みの場合、その日の終値はありません。
その場合は、死亡日に最も近い取引日の終値を使います。前後の取引日までの日数が同じであれば、両日の終値を平均します。
たとえば、前後の営業日に通常どおり取引が行われていた場合は、次のようになります。
| 亡くなった日 | 死亡日の終値に代えて使う価格 |
| 土曜日 | 前日の金曜日の終値 |
| 日曜日 | 翌日の月曜日の終値 |
| 水曜日が祝日 | 火曜日と木曜日の終値の平均額 |
「休場日なら必ず前営業日の終値を使う」というわけではありません。
こうして求めた価格を、死亡月・前月・前々月の月平均額と比べて相続税評価に使います。
なお、配当を受ける権利がなくなる「配当落ち」や、株式分割などをまたぐ場合には、通常とは異なる調整が必要になることがあります。
こうした特殊なケースでは、個別に確認した方がよいでしょう。
まとめ|死亡日の株価だけで相続税評価は決まらない
死亡日に保有株が急騰していても、その高い株価だけで相続税評価が決まるわけではありません。
死亡日の終値と、死亡月・前月・前々月の月平均額を確認し、最も低い価格を用いて評価するため、「亡くなった日に株価が上がってしまったから、相続税も高くなる」と慌てる必要はありません。
一見すると単純なルールに見えますが、死亡日が休場日だった場合や、配当落ち・株式分割などをまたぐ場合には、評価方法が変わることがあります。
株式の評価方法に迷う場合や、預貯金・不動産など他の財産も含めて相続税申告に不安がある場合は、相続税に詳しい税理士へ相談するのがおすすめです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の判断については、専門家にご相談ください。


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