会社設立と聞くと、株式会社の設立をイメージする人が多いかもしれません。しかし新たに設立できる会社形態は全部で4種類あります。会社設立における希望条件によっては、株式会社以外の種類が適している可能性もあるでしょう。
自分の希望や目的に合う会社形態を選ぶためには、会社形態ごとの違いを押さえることが大切です。今回は会社形態それぞれの特徴や、どの会社形態を選ぶかの考え方について解説します。
現行制度で設立できる会社形態は4種類
現行の法律において、新たに設立できる会社形態は以下の4種類です。
株式会社 | 持分会社 | |||
合同会社 | 合名会社 | 合資会社 | ||
所有と経営 | 分離 | 同一 | 同一 | 同一
(有限責任社員と無限責任社員で分離) |
責任の範囲 | 有限責任 | 有限責任 | 無限責任 | 有限責任と無限責任 |
設立費用 | 20万円~ | 7万円~ | ||
役員の任期 | 定め有 | 定め無 | ||
決算公告の義務 | 有 | 無 | ||
2023年の設立件数 | 100,669件 | 40,751件 | 15件 | 17件 |
設立件数の出典:e-Stat「登記統計 商業・法人-会社及び登記の種類別 会社の登記の件数 2023年」
それぞれ詳しく解説します。
株式会社
株式会社は株式の発行により設立や事業活動に必要な資金を調達する仕組みの会社です。
株式会社の特徴として「所有と経営の分離」が挙げられます。会社の所有者は出資者である株主で、実際に会社経営を行うのは取締役です。会社経営による利益の一部は株主に還元されます。
そのほかの特徴として以下の5つが挙げられます。
- 有限責任(出資した範囲のみで責任を負う)
- 唯一決算公告の義務がある
- 会社設立時に定款認証を受ける必要がある
- ほかの会社形態に比べて設立費用が高い
- 役員の任期に定めがある
株式会社の最大のメリットは外部からの資金調達がしやすい点です。所有と経営の分離や有限責任といった仕組みから、投資家にとって出資しやすい会社形態といえます。また、持分会社に比べて遵守するべきルールが多い分、社会的信用を得やすい点もメリットです。
デメリットとして、設立費用が高い点や、ほかの会社形態に比べて設立・運営の手間がかかる点が挙げられます。
合同会社
合同会社は株式会社に次いで設立件数の多い会社形態です。持分会社の中では圧倒的な設立件数を誇ります。
合同会社の特徴として以下の5つが挙げられます。
- 設立費用が安い
- 決算公告の義務がない
- 役員の任期に定めがない
- すべての出資者(社員)が会社に対する決定権を有する
- 有限責任
このうち1~3はほかの持分会社にも共通する特徴です。
合同会社のメリットとして、設立や運営コストが安い点が挙げられます。定款認証が不要・役員任期の定めがなく変更登記や重任登記が不要といった理由からコストを抑えられます。また、決算公告や役員の変更登記等が不要なため、株式会社よりも手間がかからない点もメリットです。
一方、株式会社に比べると社会的信用を得にくいというデメリットがあります。株式の発行ができないため、外部からの資金調達が難しい点にも注意が必要です。
合名会社
合名会社は無限責任社員のみで構成される会社です。合名会社ならではの特徴として以下の2つが挙げられます。
- 出資者全員が無限責任社員
- 社員一人ひとりの個性が尊重されており、全員に業務執行権や代表権が付与される
責任の範囲が無限という点から、4種類の中でも特にリスクが高い会社形態といえるでしょう。合名会社ならではのメリットも少ないため、持分会社を設立したいと考える場合は合同会社と選ぶのが一般的です。
合資会社
合資会社は有限責任社員と無限責任社員から構成される会社です。出資者が有限責任社員、実際に経営を行うのが無限責任社員となります。有限責任社員と無限責任社員の両方が必要なため、4種類の中で唯一1人での設立ができない会社形態です。
万が一会社が倒産した場合、無限責任社員は会社の負債全額の返済義務を負います。個人にかかる負担が重く、合名会社と同様にリスクが高いといえます。
【会社設立】どの会社形態にするかの判断基準
現在設立できる会社形態は4種類ですが、合名会社と合資会社を設立するケースはごく稀です。実際のところ、株式会社と合同会社の2択といえます。
この章では株式会社と合同会社のどちらにするかの判断基準の例を3つ紹介します。
会社設立コスト
会社設立コストを抑えることを優先するのであれば、合同会社がおすすめです。
株式会社と合同会社などの持分会社では、会社設立費用の相場に10万円以上の差があります。設立コストに差がある理由は以下の2つです。
- 株式会社は定款認証が必須であり、定款認証手数料3~5万円が発生する
- 株式会社の登録免許税は最低15万円、持分会社の場合は最低6万円と大きな差がある
会社の設立時だけでなく、事業開始までにもさまざまなコストがかかります。少しでも初期費用を抑えたいと考える場合には合同会社をおすすめします。
将来的に事業規模の拡大を目指すか
事業規模の拡大を目指すのであれば株式会社が最適です。理由として以下の3つが挙げられます。
- 株式発行による資金調達ができる
- 社会的信用を得やすいため、融資や人材採用などで有利
- 要件を満たせば上場が可能
重視する要素
会社運営において重視する要素で判断するのも良いでしょう。
例えば、資金調達や採用面で有利に動くためには社会的信用が必須となります。このような場合は社会的信用を得やすい形態である株式会社がおすすめです。
一方、「会社運営の手間を抑えたい」「小規模で事業を行いたい」等の理由があれば、合同会社が適しています。また、意思決定のスピード感を重視する場合にも、所有と経営が同じである合同会社が良いでしょう。
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