法人の預金残高が増えてくると、金融商品への投資や設備投資などに活用したいと考える経営者の方もいるのではないでしょうか。
法人の余剰資金の運用を検討する際は、今後の支出や資金繰りを確認し、事業に影響しない範囲で運用額を決めることが重要です。
この記事では、法人の余剰資金の考え方や、運用に回せる金額の判断方法、主な活用方法などを解説します。
・法人の余剰資金とは

法人の余剰資金とは、事業を継続するために必要な資金や、今後支払う予定の資金を確保したうえで、当面使う予定のない資金を指します。
会社の預金残高には、人件費や家賃、仕入代金などの運転資金だけでなく、法人税や消費税などの納税資金、借入金の返済資金、賞与や設備投資に使う予定の資金も含まれています。
そのため、預金残高が多くても、そのすべてが余剰資金と言えるわけではありません。
運用に回せる金額は、現在の現預金残高から、次の資金を差し引いた金額が目安です。
・当面必要な運転資金
・納税資金
・借入金の返済資金
・賞与や設備投資などの予定支出
・売上減少や入金遅延などに備える予備資金
必要な手元資金は、業種や売上の変動、売掛金の回収時期、在庫の量などによって異なります。
決算書上の利益や現在の預金残高だけで判断せず、資金繰り表で今後の入出金を確認したうえで、運用に回せる金額を把握することが重要です。
・法人の余剰資金の主な活用方法

法人の余剰資金の活用方法は、金融商品への投資だけではありません。
資金を使う時期や目的に応じて、さまざまな形が検討できます。
・預金で保有する
余剰資金と判断した金額であっても、元本割れを避けたい場合や、急な資金需要に備えたい場合は、預金で保有する方法があります。
特に、売上の変動が大きい場合は、必要なときにすぐ引き出せる預金で保有することも検討しましょう。
決済に使う資金と、当面使う予定のない資金を口座などで分けて管理すると、運用に回せる金額を把握しやすくなります。
・設備投資や人材投資に使う
余剰資金を、本業の成長につながる投資に使う方法もあります。
具体的には、設備の購入や更新、業務システムの導入、人材採用、社員教育、広告宣伝などが挙げられます。
事業への投資によって、売上の増加や業務効率化、生産性の向上につながる可能性がありますが、支出すれば必ず成果が得られるとは限りません。
期待できる効果や資金を回収できるまでの期間も考慮したうえで判断することが大切です。
・法人名義で金融商品に投資する
当面使う予定のない余剰資金は、法人名義で株式や債券、投資信託などの金融商品に投資することもできます。
ただし、金融商品には元本割れや価格変動のリスクがあります。
相場が下落している時期に資金が必要になると、損失が出た状態で売却しなければならない可能性もあります。
配当金や分配金、売却損益などは、法人の決算や税額に影響する点にも注意が必要です。
また、有価証券は、売買目的で保有するかどうかによって期末の評価方法が異なります。
金融商品へ投資する場合は、資金を使う予定時期や許容できる損失額を確認するとともに、会計・税務処理についても事前に税理士へ相談することをおすすめします。
・法人保険を活用する
余剰資金の運用方法として、法人保険を活用する方法があります。
法人保険を活用することで、経営者に万一のことがあった場合の事業資金や、将来支給する役員退職金を準備できます。
ただし、支払った保険料の全額を損金に算入できるとは限りません。
保険の種類や最高解約返戻率などによっては、保険料の一部または全部を資産として計上する必要があります。
また、解約する時期によっては、受け取る解約返戻金が支払った保険料の総額を下回る場合があります。
保障内容や保険料負担、解約返戻金、解約時期、受取時の税務処理まで確認したうえで検討しましょう。
・役員報酬や役員退職金として個人に移す
余剰資金を役員報酬や役員退職金として個人へ移し、個人名義で運用する方法もあります。
個人へ移した資金は、生活資金や老後資金など、個人の目的に合わせて運用できます。
ただし、役員報酬を増やすと、所得税や住民税、社会保険料の負担が増える可能性があります。
また、法人側で損金に算入するためには、要件を満たす必要があり、余剰資金が生じた時点で自由に増額できるわけではありません。
役員退職金として個人に移す方法もありますが、実際の退職を前提として、適正額や支給時期、株主総会等の決議などを検討する必要があります。
余剰資金を個人に移すことを検討する際には、税負担などを踏まえて税理士に相談しましょう。
・法人の余剰資金を運用するときの注意点

法人の余剰資金を運用するときの注意点を確認しておきましょう。
・運用商品の条件を確認する
金融商品を選ぶときは、運用期間や価格変動のリスク、必要なときに換金できるかを確認しましょう。
株式や投資信託などには、元本割れや価格変動のリスクがあります。
商品によっては、必要なときにすぐ売却できない場合もあります。
一つの商品に資金を集中させず、会社の資金繰りに影響しない範囲で、どの程度の損失まで許容できるかを決めておくことが大切です。
期待できる収益だけでなく、売買手数料や管理費用なども確認したうえで判断しましょう。
・法人資金と個人資金を混同しない
法人オーナーであっても、会社の資金を個人的な目的で自由に使うことはできません。
個人名義で運用したい場合は、役員報酬や役員退職金など、適切な手続を経て資金を移す必要があります。
・会計・税務処理を事前に確認する
法人名義で金融商品を運用すると、配当金や分配金、売却損益などが法人の決算や所得計算に影響します。
運用を始めた後に処理方法を確認するのではなく、購入前に税理士へ相談し、決算や税額への影響を把握しておきましょう。
・まとめ:法人の余剰資金運用はまず税理士に相談しよう
法人の余剰資金の活用方法には、預金で保有するほか、設備投資や人材投資、金融商品への投資、法人保険などがあります。
それぞれ資金繰りや決算、税額への影響が異なるため、まずは会社の経営状況を把握している税理士に相談しましょう。
また、具体的な金融商品を検討する場合は、IFAに相談する方法もあります。
IFAとは、特定の証券会社などに社員として所属せず、金融商品の提案や売買の仲介を行う専門家です。
金融商品の特徴やリスク、運用期間、換金性などについて相談できます。
税理士によっては、連携しているIFAを紹介してもらえる場合もあります。
まずは税理士に資金繰りや納税予定を踏まえて運用に回せる金額を確認してもらい、必要に応じてIFAへの相談を検討しましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務判断については、税理士などの専門家にご相談ください。


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