みなし譲渡が適用されるケースは?所得税・消費税ごとに解説

税務情報

税額の計算は、通常は取引価額をベースにします。しかし、一部のケースでは「みなし譲渡」とされ、取引価額以外の金額をもとにして課税されることがあります。

この記事では、みなし譲渡とは何か、発生する税金の種類、具体例を紹介します。みなし譲渡となるケースは、通常ではあまり発生しない取引がほとんどであるため、理解をしていないと納税が漏れることも考えられます。後にペナルティを受けることのないよう、内容を確認しておきましょう。

「みなし譲渡」とは

「みなし譲渡」とは

みなし譲渡とは、無償、もしくは著しく低い価額で資産を譲渡した場合に「時価」で譲渡したものとみなして課税される税務の規定をいいます。

みなし譲渡が発生する税金は、所得税と消費税です。所得税は個人に課税され、消費税は個人・法人どちらにも課税されます。

【所得税】

所得の区分は10種類あり、区分ごとに所得税の計算方法は異なりますが、みなし譲渡と見なされる場合に課税される所得は主に「譲渡所得」です。譲渡所得は他の所得とは区分し、以下のように計算します。

課税譲渡所得金額=収入金額 -( 取得費 + 譲渡費用)-特別控除額

みなし譲渡と判定されると、収入金額が実際の取引価額ではなく「時価」として計算されます。

【消費税】

消費税は、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等に課税されます。みなし譲渡と判定されると、実際の取引価格ではなく「時価」が課税対象とされます。

「みなし譲渡」により所得税がかかるケース

「みなし譲渡」により所得税がかかるケース

「みなし譲渡」により所得税がかかるケースは以下の3つです。

  1. 「個人が法人へ」無償譲渡したケース
  2. 「個人が法人へ」著しく低い価額で譲渡したケース
  3. 限定承認で遺産相続したケース

(1)「個人が法人へ」無償譲渡したケース

無償ではなく時価で譲渡したものとして所得税が課税されます。所得税の負担を軽減するために法人へ譲渡し、租税回避することを防ぐための制度です。

【事例】

個人Aが法人Bへ、時価1,000万円、取得原価700万円の資産を無償譲渡

個人Aの実際の収入は0円であり、本来所得は発生しませんが、時価で譲渡したとみなします。このため時価1,000万円-取得原価700万円=300万円が所得税の課税対象です。

一方で個人と個人の取引は、みなし譲渡の規定は適用されません。

【事例】

「個人A→個人B→個人C」と、時価1,000万円の資産を譲渡(この間時価変動なし)

BはAから無償で購入、CはBから1,000万円で購入

この場合、個人Aは収入がなく、所得税は発生しません。個人Bは1,000万円の収入に対して所得税がかかります。

このように、個人間の取引ではいつかは所得税が課税されるため、みなし譲渡の規定はありません。ただし、取引価格によっては贈与税の課税対象になるため注意が必要です。

(2)「個人が法人へ」著しく低い価額で譲渡したケース

こちらも趣旨は(1)と同様です。「著しく低い価額」とは、時価の半分以下です。

【事例】

個人A→法人Bへ譲渡

時価1,000万円、取得原価700万円の資産を400万円で譲渡

この場合、通常は販売価格400万円が取得原価700万円よりも低額であり、所得税は発生しません。しかし、400万円が時価の半分以下であることから、税金計算上は時価で販売したものとみなされ、1,000万円-取得原価700万円=300万円が課税されます。

(3)限定承認で遺産相続したケース

被相続人(亡くなった方)から相続人(相続した方)へ相続時の時価で譲渡したとみなされます。

限定承認は、相続時に被相続人(亡くなった方)のプラスの相続財産の範囲のみで、負の財産も相続する方法です。

【事例】

被相続人Aが亡くなり、Bが限定承認で相続

相続時時価1,000万円、取得原価700万円の資産を相続

この場合、1,000万円-取得原価700万円=300万円が、被相続人Aの所得税の課税対象になります。税負担はBが引き継ぎますが、税負担を含めた負の遺産の方が相続財産よりも多い場合には、納税の必要がありません。

なお、今後Bがこの資産を売却した場合の取得原価は相続時の時価となります。相続前の値上がり部分をBは負担しません。

「みなし譲渡」により消費税がかかるケース

「みなし譲渡」により消費税がかかるケース

「みなし譲渡」により消費税がかかるケースは以下の3つです。

  1. 「法人が役員へ」無償譲渡したケース
  2. 「法人が役員へ」著しく低い価額で譲渡したケース
  3. 個人事業主が事業用の資産を家事用に転用したケース

(2)の「著しく低い価額」とは、譲渡時の時価の50%未満(ただし棚卸資産は、通常の販売価額の50%未満か仕入価額未満)をいいます。

みなし譲渡では、実際の取引価額ではなく、譲渡時の時価(ただし棚卸資産は通常の販売価額の50%未満か仕入価額のどちらか高い方)で譲渡したものとして消費税が課税されます。

特に(3)のケースでは、思わぬ消費税の負担が生じることがあるため、注意が必要です。

まとめ

まとめ

以上、みなし譲渡について紹介しました。みなし譲渡により発生する税金は所得税と消費税です。実際の取引価額とは異なる「時価」などをもとにして税額を計算することになるため、理解をしていないと納税が漏れるリスクがあります。

後日ペナルティを受けないためにも、時価と著しくかけ離れた取引をおこなう場合や、限定承認をおこなう場合、個人事業主が資産を家事転用する場合には事前に検討しておきましょう。不安や不明点がある場合は、税理士への相談をおすすめします。

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