経営者に万一のことがあった場合、売上が減少する一方で、取引先への支払いや借入金の返済などは続くため、会社の資金繰りや事業継続に影響が生じる可能性があります。
こうした事態に備えて、確保しておく資金が「事業保障資金」です。
事業保障資金を準備する方法の一つに、法人保険があります。法人保険には掛け捨て型や積立型があり、どちらを選べばよいのか迷う経営者もいるでしょう。
本記事では、解約返戻金がない、または少ないものを「掛け捨て型」、解約返戻金があるものを「積立型」として、違いを整理したうえで、必要な保障や将来の資金計画に応じた選び方を解説します。
・法人保険の掛け捨て型と積立型の違い

法人保険は、解約返戻金の有無や金額などから、大きく「掛け捨て型」と「積立型」に分けて考えることができます。
掛け捨て型は、解約返戻金がない、または少ない分、比較的低い保険料で大きな保障を確保しやすいタイプです。
一方、積立型は保険料が比較的高額ですが、解約時に返戻金を受け取れることが特徴です。
そのため、万一への保障に加えて、将来の退職金や事業資金などを準備する目的にも活用できます。
| 掛け捨て型 | 積立型 | |
| 保険料 | 比較的低い | 比較的高い |
| 解約返戻金 | ない、もしくは少ない | ある |
| 向いているケース | 保険料を抑えながら大きな保障を確保したい | 保障とあわせて将来の資金も準備したい |
※保険料等は商品・契約条件によって異なります。
掛け捨て型と積立型のどちらが優れているというものではありません。
必要な保障額や将来の資金需要、保険料の負担などを踏まえ、自社の目的に合ったタイプを選ぶことが重要です。
・法人保険の掛け捨て型・積立型を選ぶ3つのポイント

掛け捨て型と積立型のどちらが適しているかは、自社の状況によって異なります。
選ぶ際は、次の3つのポイントを確認します。
・必要な事業保障資金の額
・将来の資金使途
・保険料の負担
順に見ていきましょう。
・必要な事業保障資金の額
まず確認したいのが、企業防衛の観点から、経営者に万一のことがあった場合にどの程度の事業保障資金が必要になるかです。
事業保障資金の必要額に、すべての企業に共通する一律の計算方法があるわけではありません。
一例として、借入金などの債務返済に必要な資金と、事業を継続するための当面の運転資金を積み上げるという考え方があります。
具体的には、短期債務の額をベースとし、さらに従業員の給与総額の半年分から1年分を加える方法などです。
例:短期債務が5,000万円、毎月の給与総額が600万円の会社で、半年分の給与を確保する場合
5,000万円+600万円×6か月=8,600万円
この場合、税負担などを考慮しない単純な積み上げでは、必要な事業保障資金は8,600万円となります。
実際に法人保険でこの資金を確保する場合は、保険金に対する税負担なども踏まえて必要保障額を検討します。
必要な事業保障資金が大きい場合、その全額を積立型で準備しようとすると、保険料の負担も大きくなる可能性があります。
そのため、必要な事業保障資金が大きく、保険で大きな保障を確保する必要がある場合には、比較的少ない保険料で大きな保障を確保しやすい掛け捨て型が選択肢となります。
ただし、実際に必要となる金額は、会社の財務状況や事業内容、経営者への依存度、後継者の有無などによって異なります。
経営者が不在となった場合にどのような支出や資金不足が生じるかを具体的に想定し、自社に必要な事業保障資金を検討しましょう。
・将来の資金使途
次に、保障だけでなく、将来まとまった資金を使う予定があるかを確認します。
例えば、将来の役員退職金や事業資金などを準備したい場合には、解約返戻金のある積立型が選択肢となります。
経営者に万一のことがあった場合には保険金を事業保障に活用し、予定どおり事業を継続できた場合には、解約返戻金を将来の資金需要に充てるという考え方です。
一方、将来の資金準備を保険に求めず、万一の際の保障を確保することを主な目的とする場合には、掛け捨て型が選択肢となります。
このように、「保障の確保」と「将来の資金準備」のどちらを重視するのか、また将来どのような用途で資金が必要になるのかを明確にしたうえで選びましょう。
・保険料の負担
保険料を無理なく継続して支払えるかどうかも、重要な判断ポイントです。
一般に、積立型は掛け捨て型より保険料が高くなる傾向があります。
将来の資金準備まで重視して積立型を選んでも、保険料の支払いが会社の資金繰りを圧迫してしまっては、本業に支障が出る可能性があります。
そのため、現在の資金状況だけでなく、今後も継続して保険料を支払えるかを確認することが大切です。
保険料負担を抑えながら必要な保障を確保したい場合には、掛け捨て型が選択肢となります。
保険料を継続して支払える余力があり、将来の資金準備も重視したい場合には、積立型を検討できます。
ここまで、掛け捨て型と積立型を選ぶ際の3つのポイントを解説してきましたが、必ずしもどちらか一方だけを選ぶ必要はありません。
必要な保障額や将来の資金使途、保険料の負担を踏まえて、両方を組み合わせる方法もあります。
例えば、経営者に万一のことがあった場合に備えて大きな保障が必要な部分は掛け捨て型で確保し、将来の役員退職金などに充てる資金については積立型で準備するといった方法です。
掛け捨て型と積立型を目的に応じて使い分けることで、必要な保障を確保しながら、将来の資金準備や保険料負担とのバランスを取りやすくなるでしょう。
・まとめ:法人保険は自社の状況に合わせて選ぼう
法人保険の掛け捨て型と積立型には、それぞれ異なる特徴があります。
どちらが一律に優れているわけではなく、自社に必要な事業保障資金の額や将来の資金使途、保険料の負担などを踏まえて選ぶことが重要です。
必要に応じて、掛け捨て型と積立型を組み合わせる方法もあります。
実際に法人保険を選ぶ際には、これらのポイントだけでなく、保障が必要な期間と保険期間が合っているか、更新条件はどうなっているかなども確認する必要があります。
解約返戻金の推移や、法人保険料の税務上の取扱いなど、法人保険を契約するにあたって確認すべき点は多岐にわたります。
法人保険を含めた資金計画や税務上の取扱いについて迷う場合は、税理士などの専門家への相談も検討しましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の判断については、保険会社や税理士などの専門家にご相談ください。


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