贈与税の無申告が増えている。無申告の要因や判明する理由とは?

税務情報

国税庁が2023年12月に発表した資料「令和4事務年度における相続税の調査等の状況において、贈与税の実地調査数や追徴税額が前年度比で100%を超えたことがわかりました。また、申告漏れ件数の中では無申告が80%を占め、主に現金や預貯金が対象となったことも判明しました。

贈与税は相続税の補完税と言われており、年間110万円までの贈与であれば非課税となります。そのため、「手渡しで贈与するならばれないだろう」とお考えの方も多いかと思います。おそらく、今回対象となった無申告者の中でもそのような考えで贈与税の申告をしなかったケースもあるかと思います。贈与税の申告漏れはなぜ税務署によって明らかになるのか、そのカラクリをお伝えします。

基本的に贈与税には時効がある

暦年贈与:毎年110万円以内の贈与が非課税となる贈与

贈与税は、1年間のうちに110万円以上の贈与を受けた際に課税されます。一般的に贈与のあった翌年の3月15日までに申告しなければならず、それより遅くなってしまうと通常の税金と同様にペナルティが課されます。しかし、なかには「個人間のやりとりぐらいバレないだろう」といった意図であったり、そもそも贈与税がかかるということさえ知らないで贈与が行われることもあります。いわゆる「脱税」です。

しかし、このような贈与税の脱税においては、もちろんペナルティが課されるものの、時効が存在します。贈与があった翌年の3月16日(申告期限日の翌日)を起点として6年後に時効が成立し、たとえ贈与税を申告していなくてもさらなる課税となる可能性は低くなります。また、悪質な場合の時効は7年後までです。

なぜ贈与税の申告漏れは税務署にばれてしまうのか?

役員報酬は節税防止のために厳しい条件が定められている

贈与税の時効は7年で、なおかつ個人間での資産のやり取りといえど、なぜ大半は成立しないのでしょうか?贈与税の申告漏れは、贈与者が亡くなった後の相続税の税務調査で判明することが多い傾向にあります。相続税の税務調査では被相続人だけでなく相続人の資産状況も調査するため、その過程で判明するようです。さらに税務調査では税務署員が不明に思った点について事細かに質問があり、不明な財産について「これは贈与税か?相続税か?」と確認があります。

贈与税は相続税の補完税と呼ばれており、生前贈与の検証が相続税の税務調査において不可欠だとする税務署員は多いです。相続税はすべての被相続人が対象となるわけではなく、富裕層など資産を多く持った人が対象ですから、「あらかじめ何か生前対策をとっているに違いない」と当然ですが検討がつくでしょう。ですから、税務署員も生前対策のひとつとして有名な贈与に関しては嗅覚を鋭くさせています。

贈与税の申告漏れがばれるパターンとしては、相続税が発生したタイミングなど、大きなお金が動いたときです。では具体的にどのような時に申告漏れが判明するのでしょうか?

税務署からの文書で判明する

振り込みや不動産の名義変更と異なり、現金をそのまま渡す贈与では申告漏れが判明しづらいと思われる方も少なくないでしょう。しかし、現実はそう甘くはなく、税務署員は常に財産を持つ者についての情報を張り巡らしており、突然税務調査が行われることもあります。税務署が財産を把握する際に「お尋ね」と呼ばれる文書を財産を得た人に送ることがあり、その文書のなかでは支払い金額の調達方法など事細かに記載しなければなりません。このようにして税務署は、贈与税の申告が必要となるやりとりが行われているのかなどお金の流れを常日頃観察しているのです。

相続税の調査過程で判明する

相続税の税務調査過程で贈与税の申告漏れが判明するケースがあります。被相続人の財産はもちろん、相続人に行き渡った財産に対しても調査が入るため、そこで怪しいと判断されたお金の動きがあれば税務署員は徹底的に調査します。そのため、税務調査の過程で贈与税の申告漏れが判明するパターンは少なくありません。

10年以上前の贈与に対して申告漏れと判断されることもある

贈与税の時効は悪質なもので7年とお伝えしましたが、なかには時効となっても課税されるケースもあります。たとえば父親が子に1000万円の贈与を行ったものの、子は贈与税の申告を怠り、その10年後に父親が亡くなった場合です。この場合は時効をとっくに過ぎているものの、万が一贈与契約書を作っていなかった際は税務署の調査により相続税の申告が必要となる可能性があります。

とはいえ、贈与契約書を作成していれば時効が成立するのでしょうか?脱税目的であれば成立するとは限りません。

場合によっては贈与と思いきや相続税が課税されることも

なぜ「資本性」劣後ローンなのか?

贈与税には時効がありますが、そもそも贈与税と思って贈与者が行ったことが贈与ではなかったというケースもあります。「名義預金」と呼ばれるケースがその代表例で、たとえば子や孫名義で祖父母などが資金を積み立てている場合などが挙げられます。つまり、通帳の名義が亡くなった人と異なるケースで、本人からすれば贈与となっていたものの、亡くなったのち、その人の財産として見なされることになり相続税の対象となります。

このケースについてさらに細かく見ていきましょう。贈与においては民法549条にて下記のように定められています。

「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」

このように贈与の成立については、「贈与する側の意思表示」と「贈与を受ける側の承諾」が必要となります。そのため、先ほど述べたような名義預金といったケースは、贈与した(と思い込んでいる側)人が相手の意思に関係なく預金を管理していたということになり、贈与として定義されません。

また、名義預金にかかわらず、認知症などで贈与者の認識能力が乏しかったり、贈与契約書がないケースも贈与として認められない可能性があります。贈与税の無申告も問題ですが、本来は相続税の対象であるはずの財産が実は贈与税の対象だったということもあるため、判断が難しい場合はすみやかに税理士に相談することをおすすめします。

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