賃上げ促進税制の改正内容とは?概要や特別措置を徹底解説!

税務情報

令和6年度の税制改正において、賃上げ促進税制の強化が発表されました。これは「物価高に賃金上昇が追いついていないため、国民の負担を軽くする」「物価上昇を優に超える、持続的な賃金上昇が行われる経済を実現させる」ことを目的に実施されます。物価高、賃上げは強く生活に紐づいているからこそ、知っておいて損はない内容でしょう。そこで今回は、賃上げ促進税制の概要を解説します。

賃上げ促進税制の概要

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賃上げ促進税制とは、前年度より給与やボーナスなどを増加させた場合に、増加した金額の一部を法人税から控除できる制度です。個人事業主の場合は所得税から控除できます。法人区分や、賃上げ率によって控除率は異なりますが、法人区分は以下のとおりです。

  • 大企業
  • 中堅企業
  • 中小企業

改正前は、資金1億円以下を中小企業、それ以外を大企業として区分されていましたが、今回の改正で法人区分も変わりました。変更後の法人区分ごとに、賃上げ促進税制の改正内容を解説します。

大企業の改正内容

先述したとおり、改正前は資本金1億円を超える場合には大企業として区分していましたが、改正後は資本金1億円超、且つ従業員2,000人超を大企業として区分します。そして、これまでは賃金を3%以上増加すると15%、4%以上増加すると25%を増加金額から控除できました。しかし、改正後は賃金を3%以上増加すると10%、4%増加すると15%、5%増加すると20%、7%以上増加すると25%を増加金額から控除できるようになります。つまり、賃金を増加させるほど、受けられる恩恵が大きくなります。

中堅企業の改正内容

中堅企業は、今回の税制改正で新設される区分です。地域の雇用を支える良質な中堅企業も、賃上げをしやすい環境を整備するために新設されました。資本金1億円超、かつ従業員2,000人以下の企業を中堅企業として区分します。中堅企業は賃金を3%以上増加すると10%、4%以上増加すると25%を増加金額から控除できます。

中小企業の改正内容

改正前は、資金1億円以下の企業を中小企業として区分していましたが、改正後は資本金1億円以下、且つ従業員2,000人以下の企業を中小企業として区分します。中小企業は改正前と変わらず、賃金を1.5%以上増加すると15%、2.5%以上増加すると30%を増加金額から控除できます。また、中小企業が賃上げ促進税制をより活用しやすくなるように、新たに「繰越控除制度」が創設されました。繰越控除制度とは、賃上げを実施した年度に控除できなかった金額を5年間繰り返せる制度です。これまでは、赤字の事業者は賃上げ促進税制の恩恵を受けにくくなっていました。しかし、繰越控除制度を活用することで、期限内に黒字になれば控除を受けられるようになったため、恩恵が受けやすくなりました。

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控除を上乗せするための特別措置

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ここまで、法人区分ごとの賃上げ促進税制の改正内容を解説しましたが、一定の要件を満たすと更に控除率を上乗せできます。上乗せするための要件は以下のとおりです。

  • 教育訓練費を増加させる
  • プラチナくるみんもしくはプラチナえるぼしの認定を受ける

それぞれ詳しく解説します。

教育訓練費を増加させる

教育訓練費とは、国内雇用者の職務に必要な技術や知識を習得させたり、向上させたりするための費用を指します。具体的には外部研修への参加費用が該当します。改正前は、大企業の教育訓練費の増加割合が20%以上だと、控除率は5%上乗せされ、中小企業の教育訓練費の増加割合が10%以上だと、控除率は10%上乗せされていました。改正後は大企業・中堅企業の教育訓練費の増加割合が10%以上だと、控除率は5%上乗せされ、中小企業の教育訓練費の増加割合が5%以上だと、控除率は10%上乗せされるようになります。要件は緩和されましたが、全雇用者への給与やボーナスなどの支給額の0.05%以上という条件が、新たに追加されたため注意が必要です。

「プラチナくるみん」「プラチナえるぼし」の認定を受ける

法人区分によって、くるみん認定・えるぼし認定の求められる取得レベルは異なりますが、大企業・中堅企業・中小企業すべて、プラチナくるみん、もしくはプラチナえるぼしの認定を受けると控除率が5%上乗せされます。プラチナくるみんとは、子育てサポート支援企業として、厚生労働大臣から認定を受けた場合にもらえる証です。認定を受けるためには、以下のような基準を満たす必要があります。

  • 男性の育児休業等取得率が30%以上
  • 出産した女性労働者及び出産予定だったが退職した女性労働者のうち、子の1歳時点在職者割合が70%以上

プラチナえるぼしとは、女性の活躍躍進に対しての取り組み状況が優れている企業として、厚生労働大臣から認定を受けた場合にもらえる証です。認定を受けるためには、以下のような基準を満たす必要があります。

  • 男女別の採用における競争倍率が同等
  • 直近の事業年度における、管理職に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値の1.5倍以上

プラチナくるみん、プラチナえるぼしを詳しく知りたい場合は、厚生労働省のホームページを確認ください。

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まとめ

日本はただ物価を上げるだけではなく、賃上げの促進に向けて積極的に取り組んでいることがわかったのではないでしょうか。今回の税制改正の適用期限は2027年3月末までとなっているため、それ以降は社会情勢や世論も加味して改正されていくことが予想されます。これを機に、勤めている企業がどのように賃上げに取り組んでいるのかに注目してみてはいかがでしょうか。

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