法人化に伴う4つのデメリット。個人事業主よりも煩雑な手続きが増えることを念頭に置いた起業を。

税務情報

こちらのコラムでは、個人事業主が法人化する場合のタイミングとして、およそ700~800万円ほどの年間利益が目安と述べました。しかし、そのような基準をクリアしていても場合によっては法人化するにはデメリットとなるケースもあります。法人化というと「起業=キラキラしたもの」といったイメージが付きまとい、主にメリットが取り上げられがちですが、ここではデメリットを中心にピックアップします。

法人化すると具体的に何が変わる?


法人とは、その言葉に「人」という文字が入っている通り、法律上では1つの人格と見なされています。

個人事業主が法人化すると、「株式会社●●」や「合同会社●●」といった名称になるために、クライアントや世間からの信頼度も高まることでしょう。また、法人税が課されますが人材確保等促進税制や研究開発税制といった控除が適用されるほか、税制面でさまざまなメリットを享受できます。その他には事業承継ができるために、経営者の死後であっても銀行口座が法人名義であることから口座が凍結されずに済みます。このように個人事業主では出来ないことが法人化によって可能になります。

しかし、必ずしも法人化することが良いとは限りません。ある一定の所得を得ていたとしても法人化せずに個人事業主のままでいる場合もあります。では一体法人化するデメリットとは何なのでしょうか?

法人化のデメリット1:社会保険の加入義務が発生する

原則として、個人事業主の場合は5人以上を雇う際に社会保険の加入義務が発生します。一方で法人化すると社長1人であっても社会保険に加入しなければなりません。法人化した際は通常のサラリーマンと同様に健康保険と厚生年金保険に加入します。

個人事業主が加入する国民健康保険では、前年の所得をもとに保険料が算出されますが、社会保険では現在の給料をもとに保険料が算出されます。国民健康保険の年間保険料は最高額で90万円近くであるものの、社会保険の年間保険料の最高額はその2倍以上の190万円近くとなるので、社員の分も支払うとなると負担が増えるリスクが伴います。

しかし、国民健康保険では出産手当金や傷病手当金が支給されません。その一方で社会保険では要件を満たせば各種手当金が支給されるため、社会制度面で考えると法人化するほうがメリットが大きいといえるでしょう。

法人化のデメリット2:税理士や社労士が必要となる

個人事業主の場合、会計面においては簿記3級程度の知識があれば問題ありません。また、最近ではfreee会計などのフリーサービスがあるために普段の経理業務や確定申告がしやすくなっています。また、個人で仕事をする場合は社員を雇う必要もないため、人間関係のトラブルも避けることができます。

しかし、法人化すると税制や取引が細かくなるために簡単な会計知識だけでは経理業務がままならないことも……。そのために顧問税理士に業務を依頼することがベストでしょう。また、社員の各種手当金申請や社会保険関連業務が日々発生することも考えられます。到底社長1人でやっていくことは難しいでしょう。総務社員を雇うか、もしくは信頼できる社労士に業務を依頼するとスムーズです。

このように、法人化に伴い、経理や総務においてプロの力を借りることが必要となります。法人化する際には、税理士や社労士に業務依頼するための経費がかかることも念頭に入れましょう。

法人化のデメリット3:法人住民税の均等割がある


法人化のデメリットとしては、赤字であっても税金を払わなければならない点が挙げられます。

法人税には、主に、法人税、法人事業税、法人住民税の3種類があります。法人税とは会社の利益に課税される税金のことです。そして、法人事業税と法人住民税は地方税で、法人事業税は法人が行う事業そのものに課される税金です。また、法人住民税とは、法人税割と均等割で構成されていて、法人税額をもとに算出される法人税割と異なり、均等割では資本金や従業員の数に応じて算出されます。いわば、会社が存在するだけで課される税金といえるでしょう。そのため、事業が赤字であっても法人住民税の負担がなくなることはありません。

例えば新型コロナウイルス感染症禍で大きなダメージを食らってしまったサービス業や飲食業のように、事業によっては社会情勢などによって売上に波がある場合もあります。そのような場合、もし赤字が続くようであれば法人住民税の負担は重くなります。法人化する際は「安定して利益を得られる事業を営んでいるか」ということをベースに考えてみると良いかもしれません。そうでない場合には本業以外にいくつか収益を獲得できる事業を始めるなど安定化を図る工夫をしてから法人化を目指すほうが良いでしょう。

法人化のデメリット4:法人の設立費用がかかる

近年法人設立のハードルは低くなってきているものの、やはり設立にあたってのフローが難しいのが現状です。

具体的な法人設立のフローとしては、法人の概要を決めたり、定款を作成して提出すること、資本金を払い込むこと、登記申請書類を法務局に提出すること、税務署に書類を提出することなど、煩雑な手続きがあります。これらの手続きにおよそ1ヶ月〜1ヶ月半近くの日数を要します。また、費用は25万円程度なので、ある程度の時間や費用がかかることを想定したほうが良いでしょう。

他にも資本金の面において、1円からでも法人設立ができるものの、やはり社会的な信頼を得るためにはある程度の資本金は必要です。法人設立は1ヶ月近くでできることとはいえ、それまでに資本金を集めたり、顧客や取引先と信頼関係を築くなどの地道な努力が必要といえます。

突然の法人化は禁物。時間をかけて検討を


法人化すると個人事業主とは異なり、様々な負担がかかります。従業員を雇うことも考えられるので、これまで1人で出来ていたことがより複雑になると考えられます。また、複雑な税制度や社会制度も絡むために、税理士や社労士に業務を依頼する必要があります。

法人設立の際には資本金が必要です。1円からでも起業できるものの、資本金は社会的な信用があるかどうか判断される基準となっています。ある程度の資本金で起業したほうが、起業後も信頼できる取引先やクライアントを見つけやすいはずです。

そして法人化のうえで何よりもベースとなっているのは信頼関係でしょう。「起業=キラキラしたもの」と捉えられがちですが、実際のところは煩雑な業務が多いうえに、サラリーマンに比べてリスキーなことが沢山あります。そして、経営者にはリスキーなことや理不尽を乗り越えられるような問題解決能力の高さや体力、知力など多くの力が求められます。自分自身が数多い問題に対処できる力があるか、などの様々なパターンをシミュレーションしつつ、慎重に法人化を検討しましょう。

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