デフレ脱却・賃上げ・消費税減税。2024年度税制改正ポイントを徹底解説

税務情報

2023年12月中旬に、2024年度税制大綱が発表されました。岸田政権が掲げる「物価上昇を上回る賃上げ」に向けて、給与アップや女性活躍などの国内投資にポジティブな企業に対する税負担を軽減したり、物価高を受けて家計が逼迫する世帯に対する減税や手当の拡充を織り込んでいます。

また、政府は2024年度の税収も過去最高の23.8兆円を見込んでおり、2000年代から続くデフレからの脱却をはかっています。今回発表された税制大綱については賛否両論さまざまな声が寄せられていますが、具体的にどのような点が変わるのかピックアップいたします。

生活の税金

小規模宅地の特例とは?

円安や物価高にともなって節約や節制を余儀なくされている方は多いはずです。さらに賃金が昔より低くなっていることも生活の逼迫に繋がっているでしょう。税や制度の改正のニュースが報道されるたびに国民からの辛辣な声もあります。そのような状況下で、所得税や住民税の減税に加えて給付といった幅広い支援が決定しました。

所得税や住民税の減税

2024年6月には1人あたり所得税3万円、住民税1万円の減税が行われ、納税者だけでなく配偶者や扶養親族も対象となっています。また、減税額が4万円未満の層に対しては減税分との差額を給付でまかなうことになりました。しかし、この処置は今後ずっと続くのではなく、賃金の上昇が物価高に追いつくまでの一時的な措置として位置付けています。一方、このような減税や給付に対しては国民の理解が広まっておらず、政府の経済政策への評価は低い模様です。

高校生の扶養控除が縮小

もとより政府は2024年10月分から児童手当の対象を高校生まで拡大し、月1万円を支給すると決定していましたが、高校生における従来の扶養控除との兼ね合いが問題視されていました。そのような声を受けて、高校生の扶養控除額の縮小が決定しました。

また、シングルマザー・ファザーなどの未婚のひとり親を対象とした「ひとり親控除」の拡充に伴い、所得制限が500万円以下から1000万円以下となりました。なかには生活のためにダブルワークやトリプルワークをこなすひとり親がいるようななかでこのような制度の対象拡大は嬉しいものです。

7%以上の賃上げを行った企業に法人税優遇措置

岸田首相は、2024年夏までに国民の所得の伸びが物価上昇を上回る状態にしたいと目標を掲げています。そのことが背景にあり、前年度から7%の賃上げを行った企業に対して増額分の25%を法人税から控除する制度を設けることになりました。さらに女性活躍や子育て支援に積極的な企業に対しては控除率を引き上げます。また、リスキリングを実施する企業に対しても引き続き税制優遇を行います。

企業の税金

贈与税率は相続税率よりも高い

2024年夏までを目標としたデフレ脱却のために、企業には賃上げや女性活躍・子育て支援の推進を求めるだけでなく、国内での生産拡大を見込んだ分野への減税のほか、税逃れ防止に対しての取り組みが始まります。

半導体・EVなどの5分野への減税

半導体やEVといったこれからの世界経済において重要となる分野における国内での生産比率を高めるためにも、これらの分野に関係する企業に対する法人税の減税を行うことが発表されました。具体的には、半導体やEVの生産や販売量に応じて、事業計画の認定時から10年間にわたった減税が行われます。これまでは工場や設備といった初期投資が減税の対象でしたが、初期投資のみならず長期的な支援が新制度には組み込まれています。この制度によって、半導体やEVといった重要な分野での国内製造が促進され、優秀な人材の獲得や競争力の高まりによる企業成長が期待できそうです。

資本金減による課税逃れを防止

大企業が資本金を減らし、中小企業の扱いを受けることによる課税逃れを防ぐことにも力を入れると発表しました。というのは、外形標準課税という法人税の一種がこの対象となっており、この税は資本金や給与総額に応じて課税されます。しかし、赤字企業にも適用されるものの、資本金が1億円以下であれば課税されないため、企業によっては資本金を1億円に減らして税制上で中小企業と見なされることによって課税を回避するケースが長らく問題となっていました。

この問題を受けて、外形標準課税によって都道府県が安定した税収を得るためにも、課税対象を現行の資本金1億円以上の企業だけでなく、資本金と資本剰余金の合計が10億円以上の企業にも広げることが決まりました。この制度改革によってタックスヘイブンといった節税手段にも備えた対応ができるようになります。しかし新たな基準に関して、節税目的でない中小企業も対象になってしまうかもしれないといった声が上がっており、それを受けてスタートアップ企業などは対象外となっています。

岸田政権の目標は達成なるか

役員報酬の調整は各種税金とのバランスが大切

岸田政権への国民からの支持率は低迷しているものの、過去最高の税収を記録したり、所得税の減税や成長分野への減税といったことから考えると、税といった視点から見れば優秀な政権と言えるでしょう。長らくデフレが続いている日本ですが、岸田政権が掲げた目標は達成されるのでしょうか。色々な声が上がっているとはいえ、2024年の税制動向から目が離せません。

不動産投資オーナーのサポート実績900法人以上。
法人化・キャッシュフロー改善に強い税理士法人です

関連記事

特集記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP