「年収の壁」は、政府が現在見直しを進めている論点です。

働き方や手取りに直結する私たちの身近な話題である一方、近年の改正が続いたことで「結局いくらまでなら何が大丈夫?」がわかりづらいと感じる人も多いでしょう。令和8年(2026年)の税制改正でも、見直しが予定されています。
本記事では、「所得税」「社会保険」「控除」「住民税」の各ポイントを、最新の改正大綱も踏まえて解説します。
1. 「年収の壁」とは
年収の壁とは、一定の年収ラインが一定以上になることで、税金が発生したり、社会保険料負担が生じたりするボーダーラインのことです。
パートやアルバイトで働いている方は年収の壁を超えることで手取りが減少してしまう可能性があるため、働き方を考えるうえで重要な目安になります。
金額順に、年収の壁一覧をまとめたものが以下になります。
| 年収 | 壁の種類 | 内容 |
| 93〜110万円 | 住民税 | ・住民税の課税が開始されるライン
※自治体によって異なります。 |
| 106万円 | 社会保険 | ・社会保険(厚生年金・健康保険)加入義務となるライン
2026年10月賃金要件撤廃予定 |
| 123万円 | 税制 | ・配偶者控除・扶養控除の対象から外れるライン
※給与所得のみの場合 |
| 130万円 | 社会保険 | ・配偶者など(19歳以上23歳未満の子を除く)が社会保険の被扶養者から外れるライン
・2026年4月から労働契約書ベースの年間収入見込みで判定 |
| 150万円 | 税制 | ・特定親族特別控除(19歳以上23歳未満の子が対象)が満額でなくなるライン
・188万円以下までは段階的に控除あり ・2025年12月から |
| 150万円 | 社会保険 | ・19歳以上23歳未満の子が社会保険の被扶養者から外れるライン |
| 160万円 | 税制 | ・配偶者特別控除が満額でなくなるライン
※給与所得のみの場合 ・2025年12月から |
| 160万円
→ 178万円 |
所得税 | ・本人に所得税が課税開始されるライン
【令和8年改正】2026年1月より160万円から178万円に引き上げ予定 |
| 201万円 | 税制 | ・配偶者特別控除が0円になるライン |
改正点含め、順に解説をしていきます。
2. 所得税の壁(178万円の壁)とは
「年収の壁」ときいて一番イメージされるのは、所得税の壁でしょう。
所得税が発生するボーダーラインである所得税の壁は、従来は103万円でしたが、令和7年税制改正で、160万円まで大幅に引き上げられました。
令和8年税制改正大綱によると、2026年1月より、所得税の課税ラインはさらに178万円まで引き上げられる予定です。
これまでこの所得税の壁を意識して労働時間を抑えていた人も、従来より高い年収まで所得税がかからない見込みです。
ただし、後述する「社会保険の壁」は依然として存在するため、「税金はかからないけれど、社会保険料で手取りが減る」場合があることに注意が必要です。
3.社会保険の壁とは
社会保険の壁とは、健康保険や厚生年金への加入が必要になったり、社会保険の扶養から外れたりするラインのことです。
社会保険の壁を超えると保険料負担が生じるため、手取りへの影響が税金の壁と比べて大きくなりやすいのが特徴です。
代表的なものとして、106万円の壁、130万円の壁、そして19歳以上23歳未満の子に関する150万円の壁があります。
3-1. 106万円の壁|社会保険加入の目安
106万円の壁は、社会保険(厚生年金・健康保険)への加入義務が発生する年収のラインです。ただし、すべての人に適用されるわけではありません。
2025年12月時点では、
・週の所定労働時間が20時間以上
・月額賃金が8.8万円以上(年収約106万円)
・雇用期間が2か月を超える見込み
・学生でない
・従業員数が51人以上の企業に勤めている
これら全ての基準を満たす場合のみ適用されます。
2026年10月からは、このうち賃金要件を、全都道府県の最低賃金の状況を見極めたうえで廃止する方向が示されています。
そのため、今後は「106万円」という年収の目安だけで判断するのではなく、勤務時間や勤務先の条件もあわせて確認することが重要となってくるでしょう。
3-2. 130万円の壁|社会保険の扶養から外れる目安
130万円の壁とは、家族の社会保険の扶養に入っている人が、その扶養から外れる目安となるラインです。
一般に、年間収入が130万円以上になると、配偶者などの被扶養者ではいられなくなり、自分で社会保険に加入する必要が生じます。
2026年4月からは、130万円の壁の判定方法が見直されます。
従来は1年間の収入見込みを基準に判断していましたが、今後は労働契約書などに記載された年間収入見込みを基準に判定する方向です。
そのため、繁忙期などで一時的に収入が増えた場合でも、契約時点での収入見込みが年間130万円未満であれば、ただちに扶養から外れなくなる見通しです。
3-3. 150万円の壁|19歳以上23歳未満の子の特例
150万円の壁は、19歳以上23歳未満の子について、社会保険上の扶養認定で使われる特例のラインです。
2025年10月以降は、被扶養者となる人が19歳以上23歳未満で、かつ配偶者ではない場合、年間収入要件は130万円未満から150万円未満に引き上げられました。
これは、大学生の子どもがアルバイト収入を増やしても、直ちに社会保険の扶養から外れにくくするための見直しです。この特例は年齢要件を満たす子などに限られ、配偶者には適用されません。また、年間収入要件以外の条件は従来どおりです。
4.控除の壁とは
控除の壁とは、配偶者控除や扶養控除の対象になるかどうかの目安となる年収ラインです。
4-1.123万円の壁|配偶者控除・扶養控除の対象外となるライン
配偶者控除及び扶養控除とは、一定の所得以下の配偶者及び親族がいる場合に納税者本人が受けられる控除です。
令和7年度税制改正により、配偶者や扶養親族の所得要件は合計所得金額48万円以下から58万円以下に引き上げられました。
給与収入のみの場合は、控除を受けられる基準が103万円以下から123万円以下へ見直されたことになります。
控除の対象外になると、世帯全体での税負担が上がります。
ただし、配偶者については配偶者特別控除が適用される場合があるため、123万円の壁を超えたからといって、すぐ控除が完全になくなるとは限りません。
4-2.150万円の壁|19歳以上23歳未満の子の特例「特定親族特別控除」
令和7年度税制改正では、19歳以上23歳未満の子を対象とする特定親族特別控除が創設されました。
これは、大学生年代の子がアルバイトなどで収入を得たことにより、親の税負担が急激に増えることを防ぐための制度です。
19歳以上23歳未満の子の給与収入が150万円以下であれば、親は63万円の控除を満額で受けられます。
150万円を超えても、すぐに控除がなくなるわけではなく、188万円以下までは段階的に控除額が減る仕組みです。
つまり、150万円の壁は満額控除ではなくなり始めるラインとなります。
4-3.160万円の壁|配偶者特別控除の満額適用ライン
2025年の税制改正で、配偶者特別控除を満額受けるための配偶者の年収上限が、150万円から160万円に引き上げられました。
配偶者の年収が160万円までであれば、納税者は配偶者控除と同額の38万円の配偶者特別控除を受けられます。160万円を超えると控除額は段階的に減少します。
4-4.201万円の壁|配偶者特別控除の適用上限ライン
「201万円の壁」とは、配偶者特別控除が適用されなくなる年収の上限です。
配偶者の年収が201万5,999円以上になると、納税者本人は配偶者控除も配偶者特別控除も受けられません。
5.住民税の壁(110万円の壁)とは
住民税の壁とは、一定の年収を超えると住民税が課税されるラインのことです。住民税は前年の所得に基づいて課税され、均等割と所得割の2種類があります。
令和7年度税制改正により、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられたため、住民税の非課税基準も見直されました。
給与収入のみの場合、多くの自治体では100万円以下から110万円以下へ引き上げられています。
ただし、住民税の非課税基準は自治体によって異なります。多くの自治体が110万円を基準としていますが、一部地域では93万円、97万円、100万円の場合もあるため、お住まいの自治体の基準を確認しておくと良いでしょう。
また、住民税は前年の所得をもとに翌年度に課税されるため、例えば2025年の年収は2026年度の住民税に影響します。所得税の壁とは基準や適用時期が異なるため、混同しないよう注意しましょう。
6.まとめ
6.まとめ
年収の壁は、相次ぐ税制改正や社会保険制度の見直しによって、以前よりも複雑になっています。
税金の壁と社会保険の壁など異なる影響が出る壁があるため、単に年収だけでなく「何の壁に当てはまるのか」を分けて確認することが大切です。
今後も制度の見直しが続く可能性があるため、働き方や収入の見込みを考える際は、最新の改正点を押さえたうえで判断しましょう。


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