不動産オーナーにとって、家賃収入などの所得を申告しない「無申告」は、大きなリスクを伴います。軽い気持ちで申告を怠ると、後々深刻な事態を招きかねません。税務署はさまざまな情報から不動産所得を把握しており、発覚は時間の問題です。この記事では、不動産所得の無申告が引き起こす具体的なリスクと回避策について解説します。
不動産所得の無申告リスクと基本

不動産経営で得た所得の無申告は、大きなリスクを伴います。申告義務の基準を誤解し、意図せず無申告状態になることは少なくありません。まず、不動産所得における申告の基本を理解し、なぜ無申告が発覚するのか、そのリスクの根源を知ることが大切です。
申告義務が発生する基準
不動産所得が年間20万円を超える会社員や、所得の合計が48万円の基礎控除額を超える個人事業主などは、確定申告の義務が生じます。この「所得」とは、家賃収入の総額から必要経費を差し引いた金額のことです。収入が少なくても、経費を差し引いた後の所得が基準額を超えれば申告が必要です。この基準を正しく理解していないことが、無申告の第一歩になるケースは少なくありません
なぜ無申告が発覚するのか
税務署は強力な調査権限と情報網を持っています。例えば、不動産の登記情報から所有者を把握し、賃借人からの支払調書や、周辺の家賃相場から収入を推計することが可能です。また、近年は金融機関への照会も積極的に行われており、入金履歴から所得の存在を把握されます。第三者からの密告によって税務調査に至ることもあります。「バレないだろう」という安易な考えは通用せず、無申告はいずれ発覚するリスクが高い状態です。
時効成立は期待できない
税金の徴収権には時効が存在し、原則として5年です。しかし、これはあくまで申告があった場合の話であり、意図的な所得隠しなど悪質なケースでは7年に延長されます。無申告の状態を長年続けて時効の成立を期待することは、現実的ではありません。税務署は過去に遡って調査を行い、発覚した際には数年分の税金とペナルティを一度に請求します。
不動産無申告がもたらす深刻なリスク

不動産所得の無申告が発覚すると、単に納税するだけでは済みません。そこには金銭的、社会的なペナルティという深刻なリスクが伴います。ここでは、不動産の無申告が具体的にどのような不利益につながるのか、そのリスクを3つの側面から解説します。
重いペナルティとしての加算税
無申告に対する直接的なペナルティが加算税です。自主的に期限後申告した場合でも、原則として納付税額の5%が課されます。税務調査を受けてからの指摘で申告した場合は、税額50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の「無申告加算税」が課されます。さらに、意図的な隠蔽行為があったと判断されると、重い「重加算税」が適用され、税率は35%または40%にも達するため、大きな金銭的負担となるでしょう。
利息に相当する延滞税
延滞税は、法定納期限の翌日から実際に納税する日までの日数に応じて課される、利息に相当する税金です。税率は年によって変わりますが、納期限から2ヶ月を経過すると税率が高くなります。無申告の期間が長引くほど、この延滞税の額は雪だるま式に膨れ上がります。加算税と延滞税は二重に課されるため、本来の納税額をはるかに超える金額を請求されるケースも珍しくありません。
社会的信用の失墜
金銭的なペナルティに加え、無申告は社会的信用の失墜という大きなリスクも伴います。税務調査が入り、追徴課税を受けたという事実は、金融機関からの評価に悪影響を及ぼす可能性があります。これにより、新規の融資が受けにくくなったり、既存のローンの借り換えが困難になったりする事態も考えられるでしょう。不動産経営を継続、拡大していく上で、金融機関との良好な関係は欠かせません。
不動産の無申告リスクを回避する対策

不動産所得の無申告がもたらすリスクは深刻ですが、適切な対応で回避できます。すでに無申告の状態でも、放置せずに行動することが重要です。ここでは、不動産の無申告リスクを乗り越え、健全な経営を続けるための具体的な対策を解説します。
速やかな期限後申告の実施かな期限後申告の実施
もし現在、無申告の状態であることに気づいたなら、一日も早く自主的に「期限後申告」を行うべきです。税務調査の通知が来る前に自主的に申告すれば、無申告加算税の税率が5%に軽減されます。さらに、一定の要件を満たせば、この加算税が免除される可能性もあります。問題を先延ばしにしても状況は悪化するだけです。専門家である税理士に相談し、過去に遡って正確な申告書を作成・提出することで、ペナルティを最小限に抑えられます。
正しい経費計上の重要性
不動産所得を正しく計算するためには、必要経費を漏れなく計上することが欠かせません。経費として認められるものには、固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費、管理費などいくつもあります。これらの経費を適切に計上することで、課税対象となる不動産所得の金額を抑え、結果として納税額を適正化できます。日頃から領収書や契約書などの証拠書類を整理・保管し、何が経費になるのかを正しく理解することが、適正申告の基本です。
専門家への相談という選択肢
不動産の税務は複雑な部分が多く、オーナー自身ですべてを完璧に把握するのは困難な場合があります。申告に不安がある場合や、無申告の状態から抜け出したい場合は、不動産税務に詳しい税理士に相談するのが確実な方法です。専門家に依頼すれば、正確な申告を代行してくれるだけでなく、節税に関する有益なアドバイスも受けられます。
まとめ
不動産所得の無申告は、無申告加算税や延滞税といった金銭的なペナルティではなく、金融機関からの信用失墜という深刻なリスクを伴います。税務署の情報収集能力は高く「バレないだろう」という考えは通用しません。申告手続きに不安を感じる場合は、税理士などの専門家に相談し、サポートを受けることが健全な不動産経営を継続する上で賢明な選択になります
              

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