ローンなのに自己資本比率が高くなる「資本性劣後ローン」とは?

みらい会計

「ライザップ」で知られるRIZAPグループが、格安ジム「chocoZAP(ちょこざっぷ)」事業のさらなる拡大に向けておよそ67億円もの資金調達を行いました。その内訳として55億円を資本性劣後ローンでまかなっています。

通常、企業が資金調達をする際は借入金に該当することが多いですが、この「資本性劣後ローン」とは通常の資金調達方法とは何が違うのでしょうか?

また、資本性劣後ローンと聞いて「そもそもローンなのになぜ資本性があるの?」と疑問に思われる方も多いでしょう。今回は資本性劣後ローンについて、具体的にどのようなものなのか解説します。

そもそも劣後ローンとは?

そもそも劣後ローンとは?

資本性劣後ローンとは、端的に言えば「資本性のある劣後ローン」です。では劣後ローンとはどのようなものかというと、返済順位が劣後する、つまり劣るローンのことです。会社が倒産した際は会社の資産整理が行われますが、残った資産は債権者に分配されるのではなく、債権の種類によって優先順位が決まっています。

破産債権は民法上4つの種類に分けられており、優先順位ごとに下記の通りとなっています。

  • 1番目:優先的破産債権
    各種税金、社会保険料、従業員の給料など
  • 2番目:一般の破産債権
    金融機関からの借入金、買掛金、売掛金
  • 3番目:劣後的破産債権
    破産手続開始後の利息、損害金など
  • 4番目:約定劣後的破産債権
    劣後ローン、劣後債

まず、破産後に優先的に支払われるのは従業員の給料などが挙げられます。次に金融機関からの借入金が続き、劣後ローンや劣後債は最も優先度が低くなっています。つまり、劣後ローンはもし会社が破産した際に回収が不可能となる可能性の高いローンなのです。

なぜ「資本性」劣後ローンなのか?

なぜ「資本性」劣後ローンなのか?

万が一会社が破産した際に回収が不可能となる可能性が高いローンであることから、劣後ローンの金利は高めに設定されています。これらの説明からも分かるように、会社が破産しても回収が難しいという点において株式と性質が似ています。

そのため、帳簿上では債務に分類されるものの、金融機関では自己資本の一部として見なされており、そのような理由から「資本性劣後ローン」と呼ばれているのです。

通常は企業が借入金としてお金を借りた際、債務が膨らんで自己資本比率が低くなります。しかし、資本性劣後ローンを利用して資金調達を行うと、同じ債務に分類されるものの自己資本として見なされるため、形式上では自己資本比率が高まります。

なお、ここで紹介した点に加えて、資本性劣後ローンが通常のローンと違うポイントは下記の2つです。

  • 元金は最終期限一括での支払いとなり、最終回までは利息を支払う
  • 業績に応じて金利が決められており、赤字の場合は金利が低い

また、資本性劣後ローンにはさまざまな名称があり、「資本性借入金」「資本生ローン」「疑似エクイティ的融資」などとも呼ばれています。

資本性劣後ローンと融資の違いとは?

資本性劣後ローンと融資の違いとは?

では、資本性劣後ローンと融資はどのように違うのでしょうか?どちらも同じく債務でありながらも、資本性劣後ローンの方が条件が厳しく設定されています。融資はどのような企業でも受けられますが、ある一定の技術やノウハウを有している企業が、時間がかかるような事業を始める際に資本性劣後ローンが利用される傾向にあります。

今回冒頭部で紹介したRIZAPグループはまさしくその一例でしょう。また、返済方法についても、融資では毎月の分割ですが、資本性劣後ローンでは最終期限に一括での支払いとなります。

このように、資本性劣後ローンでは万が一会社が破産した時に回収の優先順位が最後となったり、債務であっても自己資本にカウントされたりといった大きなメリットがあります。そのためすべての企業が利用できるわけではなく、信頼性や透明性の高い企業が利用できます。

資本性劣後ローンが使われる場面

資本性劣後ローンが使われる場面

資本性劣後ローンはどのような場合に利用されるのでしょうか?資本性劣後ローンは、大企業のみならず、中小企業や個人事業主も利用できます。また、近年では新型コロナウイルス感染症で業績に影響を受けた企業に向けて、日本政策金融公庫による「新型コロナ対策資本性劣後ローン」が実施されました。

資本性劣後ローンが利用される主なケースとしては、スタートアップ企業やベンチャー企業が資金調達を行う際です。これらの企業では事業拡大に向けて手持ちの資金をフルに使っているため、資金繰りが困難になりやすいです。

通常は借入金を利用しますが、事業拡大をスピーディーに行う際には借入限度額を超えてしまうため、そのような場合に資本性劣後ローンを利用します。

事業拡大で頼りになる資本性劣後ローン

事業拡大で頼りになる資本性劣後ローン

「資本性劣後ローン」と聞くと通常のローンをはじめとした債務のイメージが強いものの、自己資本比率を高められるので、事業拡大をする際には頼りになる存在といえるでしょう。また、金利が業績に応じて決まるため、今現在一時的に業績が悪い状況であっても今後の伸び代に期待できるようであれば力強い助け舟といえそうです。

便利な面がある一方で審査基準が厳しく、一般の融資よりもハードルが高くなりますが、税理士などの専門家によるサポートでハードルをクリアできることもあります。

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