「創業」「開業」「起業」は、いずれも事業の開始に関連する言葉で似たイメージをもたれやすく、混同される場面も見受けられます。しかしこれらはそれぞれ異なる意味を有するため、誤った使い方をしてしまうと、意図とは異なる伝わり方となる恐れがあります。
伝えたい内容を正しく伝えるためには、言葉の意味を正しく理解し、違いを押さえることが大切です。今回は創業・開業・起業の違いや使用例、上手く使い分けるためのポイントについて解説します。
創業・開業・起業それぞれの意味の違いと使用例
はじめに、創業・開業・起業それぞれの意味の違いと具体的な使用例を紹介します。
創業は「形態問わず事業を始めること」を意味する
創業は個人事業主や組織といった形態を問わず、事業を始めることを意味する言葉です。届出の有無や提出日等は関係なく、創業者が「この日に事業を開始した」と決めた日が創業の日となります。
創業という言葉の大きな特徴は、主に過去を振り返る際に用いる点です。例えば「この会社は明治〇年に創業した」「今年で創業100年を迎える」等の使い方をします。
反対に「来年創業予定である」のように、これから事業を開始する場合に創業を使うのは不自然です。
開業は「個人事業主として事業を始めること」を指すのが一般的
開業は新たに事業を始めることを意味する言葉です。意味は創業と似ていますが、開業は一般的に個人事業主として事業を始めることを指します。
個人事業主として活動を開始する際、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出が必要です。この届出が通称「開業届」と呼ばれるため、個人事業主として事業を始めることも開業と呼ばれます。
なお、会社設立時に税務署に提出する届出は「法人設立届出書」です。個人事業主の開業と違い、会社の場合は設立という別の言葉が用いられています。
開業の使用例として「独立して個人事務所を開業した」「美容師として開業した」などが挙げられます。
起業は「将来事業を始める予定」の場合に使う
起業も創業や開業と同じく、新たに事業を始めることを意味する言葉です。
ただし他の用語と違い、一般的には将来事業を始める予定を意味する言葉として用いられます。具体的な使用例として「今年中に起業したいと思っている」「来月起業する予定だ」などが挙げられます。
最近では起業という言葉を「ベンチャー」や「スタートアップ」の意味合いで使う場面も増えています。新たな事業の中でも、特に新規性・挑戦的なビジネスを立ち上げる場合に用いるイメージです。
過去に事業を開始した旨を意味する場合にも使用できます。ただし起業という言葉を過去に対して使う場合、「同級生が先月起業した」「また新しいビジネスで起業したようだ」のように、少し前の出来事を指すのが一般的です。歴史の古さをアピールする場面では「起業」ではなく「創業」という言葉が用いられます。
そのほか似た意味を持つ用語の例
創業・開業・起業以外にも、事業の開始に関連する言葉として以下の例が挙げられます。
- 設立
- 創立
- 独立
設立は会社の立ち上げに対してのみ使用できる言葉です。「来月に会社を設立する」「会社の設立から20年が経過した」のように使います。個人事業主や会社以外の法人形態として事業を開始した場合には、設立という言葉は使えません。
創立は組織の立ち上げを意味する言葉です。会社だけでなく、組合や団体などの事業開始にも使用できます。
独立はこれまで所属していた組織から離れて一人で事業を立ち上げることを意味する言葉です。事業の開始そのものよりも、独り立ちの事実を強調するイメージとなります。
創業・開業・起業など似た言葉を上手く使い分けるポイント
創業・開業・起業、そのほかの類義語は前述のように異なる意味を持ちますが、似たイメージのためどうしても混同しやすいでしょう。似た言葉を正しく使い分けるには、言葉の意味を覚えるだけでなく、使い分けの判断基準を押さえるのがおすすめです。
この章では創業・開業・起業など事業の開始に関連する似た言葉を使い分けるためのポイントについて解説します。
事業の開始が「過去」か「未来」かで考える
最初に、事業の開始が「過去」か「未来」か考えましょう。
これから事業を開始する予定、すなわち事業の開始が未来のことであれば、「起業」を使用するのが一般的です。創業・開業・起業のうち、未来についても使用できるのは起業のみとなります。
過去の中でも、事業開始が何年も前であれば「創業」を使うのが一般的です。「創業〇〇年記念パーティー」や「創業〇〇年の歴史をもつ」など、年月の長さを強調する場面では創業が用いられます。
事業者としての形態で考える
事業者としての形態で考えるのも良いでしょう。
創業・開業・起業のうち、開業は個人事業主として事業を開始した場合のみ使う言葉です。法人として事業を開始したのであれば、開業という言葉は避けましょう。
また、「そのほか似た意味を持つ用語の例」で紹介した「設立」は会社に対してのみ使用できます。会社以外の組織を立ち上げて事業を開始したのであれば「創立」が適しています。
今回紹介したうち「創業」「起業」「独立」は区分に関係なく使用できる言葉です。
アピールしたい要素で考える
創業・開業・起業などの言葉を使って何をアピールしたいのかを考えましょう。
事業としての歴史の長さをアピールする場面では、前述のように「創業」が適しています。組織立ち上げからの年月をアピールするのであれば「創立」、会社であれば「設立」も使用できます。
最近事業を開始した旨を伝えるのであれば「起業」「開業」が良いでしょう。「創業」は歴史を強調する意味合いがあるため、事業を開始したばかりではあまり使われません。
独り立ちや挑戦を強調する場面では「独立」「起業」がおすすめです。独立の方は「独立開業」と、開業とあわせて使用するケースも多くみられます。
コメント