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相続した自社株を会社に買い取ってもらう方法|納税資金・税務特例・手続きを解説

相続

自社株を相続したものの、相続税を納めるための現金が不足する場合には、相続した自社株の一部を発行会社に売却し、その代金を納税資金に充てる方法があります。

ただし、相続した自社株を会社に売却する際には、税務上の特例を利用できるか確認するとともに、会社法上の手続きを適切に行う必要があります。

また、会社の資金繰りへの影響や、売却後の持株比率・議決権の変化にも注意が必要です。

本記事では、相続した自社株を会社に買い取ってもらう際の税務上の取り扱いや会社法上の手続き、利用する際の注意点について解説します。

・相続した自社株は会社に買い取ってもらえる

相続した自社株を発行会社に売却する場合、会社側では「自己株式の取得」にあたり、取得した株式は「自己株式」または「金庫株」と呼ばれます。

自社株の会社買取りには税務上の取り扱いや会社法上の制限があるため、実際に利用する際は、主に次の2点を確認しておく必要があります。

確認事項 主なポイント
税務 みなし配当課税の特例を利用できるか、適用期限内か
会社法 自己株式取得に必要な手続きを行えるか、分配可能額の範囲内か

 

以下では、税務上の特例と会社法上の手続きについて順に確認します。

・税務|相続した自社株の売却に使える特例を確認する

相続した自社株を発行会社に売却する場合、一定の要件を満たすことで税負担を軽減できる特例があります。

主に確認したいのは、「みなし配当課税の特例」と「相続税の取得費加算の特例」です。

以下では、それぞれの適用要件や期限について解説します。

・みなし配当課税の特例を確認する

非上場株式を発行会社に売却し、売却代金がその株式に対応する資本金等の額を超える場合、原則として、その超える部分は「みなし配当」として配当所得の対象になります。

配当所得はほかの所得と合算して課税されるため、所得税・住民税等を合わせた税率は、所得に応じて最大約55.9%になる場合があります。

事業承継を円滑に進める観点から、相続や遺贈によって取得した非上場株式については、一定の要件を満たす場合にみなし配当課税を適用しない特例が設けられています。

この特例を利用すると、通常であればみなし配当となる部分も含めて、売却代金の全額を株式の譲渡所得等の収入金額として計算します。

譲渡益にかかる税率は原則20.315%となるため、所得状況によっては税負担を抑えられることがあります。

特例を利用するための主な要件は、次のとおりです。

 

・相続または遺贈により取得した非上場株式であること

・その相続または遺贈について納付すべき相続税額があること

・相続税の課税価格の計算の基礎に算入された株式であること

・その株式を発行会社へ譲渡すること

・所定の期間内に譲渡すること

・譲渡時までに、特例の適用に関する所定の届出書を発行会社へ提出すること

 

譲渡期限は、相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までで、通常は相続開始から約3年10か月が目安です。

会社への売却を検討する場合は、早めに特例の適用可否を確認しておきましょう。

・相続税の取得費加算の特例を確認する

相続した自社株を発行会社に売却する際に利用できるもう一つの特例が、「相続税の取得費加算の特例」です。

この特例を利用すると、相続税額のうち一定額を株式の取得費に加算できます。

取得費が大きくなると、その分だけ譲渡所得が少なくなるため、株式の売却にかかる税負担を抑えることができます。

また、前述したみなし配当課税の特例と、この取得費加算の特例は併用が可能です。

取得費加算の特例にも適用期限があり、原則として相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却する必要があります。

・会社法|会社が自社株を買い取るための条件を確認する

相続した自社株を会社に買い取ってもらう際は、相続人側だけでなく、会社側でも会社法上の手続きや買取金額に関する制限を確認する必要があります。

以下では、会社側で確認しておきたい主なポイントを見ていきましょう。

・株主総会の決議など必要な手続きを行う

会社が株主との合意によって自社株を有償で取得する場合は、株主総会で取得する株式数や対価の総額、取得できる期間などを決める必要があります。

また、相続人など特定の株主から自社株を買い取る場合には、原則として株主総会の特別決議が必要です。

会社と相続人が合意している場合でも、所定の手続きを経ずに自由に買い取れるわけではないことに注意が必要です。

・相続人から取得する場合の特則を確認する

特定の株主から自社株を買い取る場合、原則として、ほかの株主にも自分の株式を会社へ売却する機会を与える必要があります。

ただし、会社法上の非公開会社が相続によって株式を取得した相続人から買い取る場合には、一定の要件を満たすことで、この手続きを省略できます。

相続した自社株を会社に買い取ってもらう場合は、この特則を利用できるか事前に確認しておきましょう。

・買取額を分配可能額の範囲内にする

会社による自社株の買取りには、買取金額に関する制限もあります。

株主へ支払う金銭等の総額は、原則として会社法上の「分配可能額」を超えることができません。

そのため、会社に十分な現預金があっても、その金額まで自由に自社株を買い取れるとは限りません。

自社株の買取りにあたっては、まず分配可能額を確認し、会社法上どの程度まで買い取ることができるかを把握する必要があります。

・相続した自社株を会社に買い取ってもらう際の注意点

相続した自社株を会社に買い取ってもらう際は、買取価格や会社の資金繰り、経営権への影響にも注意が必要です。

・買取価格は相続税評価額をそのまま使えるとは限らない

相続税を計算するために算定した自社株の評価額を、そのまま会社の買取価格として使用できるとは限らないことにも注意が必要です。

相続税の申告時には相続税評価上のルールに基づいて株式を評価しますが、会社が株主から自社株を買い取る際には、税務上適正な価格で取引しているかという点も問題になります。

相続税評価額だけをもとに機械的に買取価格を決めず、事前に税理士などの専門家へ確認しましょう。

・会社の資金繰りへの影響を確認する

会社法上の分配可能額の範囲内であっても、その金額まで自社株を買い取ることが経営上適切とは限りません。

自社株を買い取るためには、まとまった現金が必要となります。

買取後に運転資金が不足したり、納税や借入金の返済、設備投資などに支障が出たりしないか確認する必要があります。

・売却後の持株比率・議決権への影響を確認する

会社が取得した自己株式には、原則として議決権がありません。

そのため、誰の株式をどの程度会社が買い取るかによって、残る株主の議決権割合が変化します。

たとえば、後継者自身が保有する株式を会社へ売却すると、後継者の議決権割合が低下し、経営権に影響する可能性があります。

買取りの前後で持株比率や議決権割合がどのように変わるかも確認しておきましょう。

・まとめ:自社株の会社買取りは特例・会社法上の制限・経営への影響を確認する

相続した自社株を会社に買い取ってもらう方法は、相続税の納税資金を確保する選択肢の一つです。

利用する際は、税務上の特例や会社法上の手続きだけでなく、会社の資金繰りや売却後の持株比率・議決権への影響も確認する必要があります。

また、特例の適用可否や適正な買取価格は、相続や会社の状況によって判断が異なります。

自社株の会社買取りを検討する場合は、実行前に税理士などの専門家へ相談し、税負担や会社への影響も踏まえて判断しましょう。

 

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の判断については、税理士などの専門家にご相談ください。

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